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良質受精卵、高率で培養 不妊治療へ装置開発 岡山大大学院・成瀬教授ら

成瀬教授らが開発した受精卵の培養装置。培養容器を載せて傾ける

培養のイメージ

成瀬恵治教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の成瀬恵治教授(システム生理学)らのグループは、不妊治療を目的に女性の卵管の動きを模倣した受精卵の培養装置を開発した。臨床試験で、通常の培養方法より妊娠につながりやすい良質の受精卵を高い確率で育成できることを証明。県立広島病院(広島市)の原鐵晃生殖医療科主任部長との共同研究で、成果は6月末にローマで開かれたヨーロッパ生殖医療学会で発表した。

 不妊治療の体外受精では、妊娠率を上げるため複数の受精卵を子宮に戻すことが多かったが、多胎の原因になるため2008年4月、日本産科婦人科学会は原則1個だけ戻す見解(指針)を発表。移植前に受精卵の細胞分裂を繰り返し、いかに妊娠しやすい状態にするかが課題となっている。

 成瀬教授らは女性の体内で受精卵が細い卵管の中を刺激を受けながらゆっくり移動して子宮に到達することに着目。受精卵の動く速度を計測し、培養容器をシーソーのように規則正しく左右に傾け、卵管内を動くのと同じ速度で卵を転がす装置を作った。

 県立広島病院で不妊治療を受けている17人の受精卵各十数個ずつを2グループに分けて培養。細胞分裂が進み、形が整っているなど移植に使える一番良い状態の受精卵が通常の培養では4個だったのに対し、この方法では13個を占めた。このうち10人の女性に1個ずつ戻し、8人で妊娠につながった。

 成瀬教授は「簡便で取り組みやすいのが特徴。卵子があまり採取できない人などさまざまな条件で効果を確かめ、ぜん動運動など卵管の他の動きも取り入れた人工卵管を作りたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年08月22日 更新)

タグ: お産岡山大学病院

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