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岡山労災病院 壺内貢整形外科部長 ロコモティブシンドローム 特に50歳以上は注意を

ロコトレ

壺内貢整形外科部長

 ロコモティブシンドローム(ロコモ、運動器症候群)をご存じだろうか。骨、関節、筋肉など運動器の衰えや病気で介護が必要になったり、その恐れがある状態だ。2007年に日本整形外科学会が提唱し、特に50歳以上に注意を呼び掛けている。「こうした状態を自覚、改善し、年を重ねても自立した生活が送れる健康長寿を目指してほしい」と語る岡山労災病院(岡山市南区築港緑町)の壺内貢整形外科部長兼人工関節センター長にロコモと、その主な原因である下肢(脚)の変形性関節症、脊柱(せきちゅう)管狭窄(きょうさく)症について聞いた。

運動器症候群

 「運動器の障害は脳卒中などと並び高齢者が要介護になる原因の一つ。だが、本人は気付いていないことが多く、知らないうちに進行する」と壺内部長。このため、日本整形外科学会は自分でロコモか調べられる七つの「ロコチェック」を示している。

 2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難▽掃除機の使用や布団の上げ下ろしなどの仕事が困難▽家の中でつまずいたり滑ったりする▽片脚立ちで靴下がはけない▽階段を上るのに手すりが必要▽横断歩道を青信号で渡りきれない▽15分くらい続けて歩けない

 一つでも当てはまればロコモの恐れがあり、同学会は対策として開眼片脚立ちやスクワットなど「ロコトレ」=図参照=を勧めている。

 こうした家庭でできる運動は「筋肉を鍛えて関節などの負担を和らげ身体能力を維持するとともに、症状の進行を遅らせることができる」と壺内部長。ただ、「ロコモの原因には老化に加え変形性関節症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症などの病気もある。足腰の痛みやしびれを感じたら医師の診断を受けてほしい」と呼び掛ける。

変形性関節症

 年齢とともに関節の軟骨がすり減り、痛みが生じる。下肢では股(こ)関節、ひざ関節に起こりやすい。

 まず痛みを和らげる治療を行う。薬物療法や関節を温めたり筋肉を鍛える理学療法、サポーターや足底板などの装具療法がある。それでも痛みがとれず、生活に支障がある場合は手術を検討する。手術には傷んだ部分を取り除き人工関節に換える方法や、脚を矯正する骨切り術がある。

 千例以上の人工関節手術を行ってきた壺内部長は「人工関節にすると8〜9割の痛みが取れ、効果は大きい。ただ、張った感じや、長く歩いたり動きすぎると痛む症状は残ることがある」と語る。

脊柱管狭窄症

 腰痛、尻から太ももの後ろにかけての痛み、ふくらはぎ周辺や足裏のしびれを生じる。背骨の中の脊柱管という空間が老化で狭くなり、中を通る脊髄や神経の枝が圧迫されるのが原因だ。

 やはり、薬や理学療法で痛みを和らげ、なお症状が強い場合は手術で神経の圧迫を取り除くこともある。壺内部長は「手術で痛みは和らぐが、長い間神経が圧迫されていると、術後もしびれやまひが残りやすい。専門家による手術のタイミングが大切」と指摘している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年09月06日 更新)

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