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(5)肺がん治療 倉敷中央病院 呼吸器外科・奥村典仁主任部長(53) 呼吸器内科・石田直主任部長(50)、吉岡弘鎮副医長(36)

「チーム医療」で貴い命と向き合う(左から)吉岡、奥村、石田の3医師

「チーム医療」の高みへ
総力挙げて患者ケア


 呼吸器科の各医師にとって、最大の難敵は肺がんといってもいいだろう。わが国のがんの中で死亡率が最も高く、毎年6万を超える人々のかけがえのない命を奪い去っていく。

 「だからこそ」とまなじりを決して、奥村は言う。「みなが各自の仕事に誇りを持ちつつ、院内の総力を挙げて患者さんと真正面から向き合っていかなければならない」と。

 着任以来、外科手術の中軸を担ってきた自負もある。昨年の実績は赴任前の2・5倍になる211例で県内トップ。地方の病院では突出しており、全国でも10指に入るという。

 うち、傷口を小さくして患者の負担を少なくする得意の胸腔鏡(きょうくうきょう)手術が約7割を占める。

 手術はがんが肺の中にとどまる初期の段階に限られ、その手法も適応の範囲も医師によってまちまちだが、奥村は手術の安全性を第一に考えながら「切除の可能性がわずかでもあるのなら、決して消極的にならないよう心掛けている」と話す。

 間質性肺炎や感染症を合併していたり、80歳以上のお年寄りなどのケースでは「ギリギリの決断」を迫られることもあるが、その際に大きな支えとなっているのが、石田の率いる呼吸器内科だ。

 5人の専門医に研修医らを含めたスタッフは総勢17人。全国でも屈指の、手厚い診療体制を誇っている。

 たった一人の呼吸器内科医として28歳で赴任以来、石田はうまずたゆまず、自力で地平を切り開いてきた。その沈着冷静な判断力で外科医からも全幅の信頼を得ている。

 施術が可能かどうかは検診を受け持つ内科だけでなく、外科を交えた合同カンファレンスで総合的に判断する。双方の風通しが大きな影響を及ぼすことにもなりかねないが、「うちでは全く心配ないですね」と石田は、笑顔で首を横に振った。

 京都大胸部疾患研究所の研修医時代、内科と外科は違えど奥村は1年先輩だった。「動」の奥村に対して「静」の石田――。タイプは異なるが、互いに気心が通じ、何でも自由に意見をぶつけ合える間柄であるらしい。

 チーム医療の充実には、だが、外科と内科の“横の壁”を取り払うだけでは十分とはいえない。担当医を最上位とした“縦の壁”を打ち砕いてフラットな関係を構築していく必要もある。

 「心のケアの面から患者さんを助けてくれる精神科医はもとより、看護師や薬剤師などいろんな人たちのお世話になっています」

 抗がん剤治療の若きリーダーである吉岡は、職種間の連係プレーの大切さを強調する。

 石田の薫陶を受けてはや5年。日々、進行がんと闘っている患者と一緒に闘っている。

 脱毛や嘔吐(おうと)に腎臓機能の低下…。長期にわたる薬剤投与の副作用ははたで想像する以上につらい。加えて、進行がんは再発するまでの期間が短く、患者の不安は極度に達する。

 心理状態は刻々と変わり、ときには自暴自棄になることもある。

 「その気持ちにスタッフ一同が心を一にして寄り添っていくことが治療の第一歩」と吉岡は心に決めている。

 9月に完成した新病棟に、内科と外科が協力して切れ目のない診療を行う「呼吸器センター」を新設した。来秋には「外来化学療法センター」も拡充するという。チーム医療の高みを目指す取り組みは着実に進んでいる。

 (敬称略)


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 おくむら・のりひと 山口大医学部卒、京都大大学院医学研究科修了。米・マサチューセッツ総合病院での研修などを経て2001年に倉敷中央病院。翌02年から現職。日本肺癌学会、日本胸部外科学会などの評議員も務める。岐阜市出身。
 気分転換は、学生時代からのテニスとスポーツジム通い。



 いしだ・ただし 京都大医学部卒。京都大胸部疾患研究所、国立姫路病院(現・姫路医療センター)を経て1988年に倉敷中央病院。2002年から現職。04年から京都大医学部臨床教授を兼務。京都市出身。
 洋の東西を問わず歴史が大好き。趣味は読書とお城巡り。



 よしおか・ひろしげ 岡山大医学部卒。神戸市立中央市民病院(現・神戸市立医療センター中央市民病院)を経て2005年に倉敷中央病院。07年から現職。この4月から外来化学療法センター部長を兼務。愛媛県・四国中央市出身。
 大学時代はサッカーに熱中。今は昨年末に誕生した長男に夢中。

倉敷中央病院

倉敷市美和1の1の1

電話086―422―0210

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www−adm@kchnet.or.jp
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(2010年10月04日 更新)

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