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おかやまの地域医療と岡山大学第1回 (下) 診療と教育支える 強固なネットワーク

しみず・のぶよし 1966年、岡山大医学部卒。同学部第2外科教授として国内初の生体肺移植に成功。同学部附属病院長、同大副学長など経て2008年から現職。同大名誉教授。70歳。

ふじき・しげあつ 1979年、岐阜大医学部卒業後、岡山大医学部第一内科に入局。津山中央病院消化器部長など経て2010年4月から現職。同大臨床教授。専門は消化器内科。57歳。

おおはら・としのり 1971年、岡山大医学部卒。同大教官、岡山済生会総合病院診療部長、副院長など経て2010年4月から現職。専門は呼吸器外科。63歳。

から続く) 


清水 “最後の砦”として期待

藤木 医師充実へサポートを

大原 臨床と研究の経験必要


人材を共に育成

 森田 大学の大きな役目は教育だ。以前は医学部の卒業生の多くは大学病院に所属し、医局が医師のキャリアアップと派遣に責任を持ってきた。だが、2004年度に始まった卒業後の臨床研修制度で、本人と各病院のマッチング制度で研修先が決まるようになったので、医局制度が崩壊し、大学が力をなくしたように言われた。しかし決してそうではなく、岡山大学の場合は関連病院がしっかりしているので、卒後研修は関連病院にお願いし、専門医研修および医学研究で大学に戻ってきてもらうのが理想的なパターンだと考えているのだが、どうだろう。

 三河内 基本はいかに良い医師を育て、その地域の医療をレベルアップし、地域に還元するか。臨床研修制度によって、最低限必要なことを指導医のもとで勉強するシステムができたことは、全体のレベルを底上げするという意味で非常によかった。私自身の体験から言えば、大学病院はすばらしい医療をしているが特殊なものにどうしても偏ってしまう。若い医師が育つには、たくさんの患者さんを診るのが一番なので、研修先は学外の病院がいいのではないか。

 大原 臨床と研究の両方を経験した方が将来的にバランスのとれた医師になれる。当院は消化器系や腎臓透析関係が多いので、研修医もそれを目指して来られるが、済生会にずっといるよりは、いろいろな病院を回り、よその手術も見た方がスキルアップする。実際、今春から消化器外科の数人に大学にいったん戻ってもらっている。

 忠田 当院でも多くの研修医が日々勉強している。彼らにとっても、またわれわれ関連病院にとっても、新しい研修システムの中で、以前よりもしっかりした研修プログラムが作成され、実践されているのは評価されることだと思う。当院では、特色でもある救急医療をはじめ各科を総合的に研修し、より多くの症例を経験できるなど大学病院とは少し異なる勉強が可能な点で、教育にも貢献できていると考えている。

 藤木 当院は救急を通してプライマリーケアを学べる点が受け、研修医に恵まれた。病院に活気が出て、指導医を刺激する形になり、病院の質そのものがアップした。関連病院独自で優れた専門医を十分には育てられないので、大学で研究後、また関連病院に戻ってきてくれるように私たちが誘導することも必要だ。

 大原 各病院が研修医を受け入れ始めてから、研修医の多い科と少ない科が出てきた。私も面接でなるべくバラエティーに富んだ研修医を採用したいと思っているが、患者さんの多い消化器外科などを希望する人が多い。将来的に疲弊する科が出てくるのではないか心配だ。

 清水 患者さんの多い病院に研修医が集まる理由の一つに、専門医制度が少しずつ充実してきた面がある。現在の専門医制度は経験した症例数を重んじるので、初期研修としては大学病院より症例を積める学外の病院にいたいのだろう。

 森田 岡山大学病院の医師の数は決して減っていない。臨床研修制度が始まる前は400人ほどだったが、今は550人と抱えきれないほど増えており、これから地域の医療機関に医師を派遣できるようになってくるだろう。

 清水 新しい臨床研修制度が始まってどうなるか分からない状況から、新しい秩序ができてきている。従来のがんじがらめの医局制度でなくなったのは明らかだが、大学で高度専門教育を受けるのが大切であることが再認識され出した。

 三河内 私は子どもたちが夢を抱ける医療でなければならないと思う。そして岡山大学には優秀な子がたくさん受験する大学であってほしい。関連病院は良い医療を提供することで市民に認めてもらい、あんな病院で仕事をしたいとか、岡山大学で勉強したいと思ってくれたらいい。そういう意味では、関連病院も責任がある。

 森田 岡山大学は岡山県の大学ではなく、少なくとも中四国の医療圏をカバーしている。初期の医療は関連病院にお願いして、高度な医療や研究はわれわれがやる。教育面でも役割分担を明確にし、優秀な医療人を共に育てていきたい。“最後の砦”として今後も先進医療と地域医療、教育の両面で日本の医療をリードする存在になりたいと思っている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年10月18日 更新)

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