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生体腎移植ドナー 負担減へ腹腔鏡手術 岡山大病院・荒木助教ら県内初展開

荒木元朗助教

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)泌尿器科(公文裕巳教授)の荒木元朗助教らのグループが、生体腎移植でドナー(臓器提供者)から腎臓を摘出する際、負担が少ない腹腔(ふくくう)鏡手術を岡山県内で初めて展開している。

 家族の承諾で臓器提供を可能にした7月の改正臓器移植法以降、「脳死」の移植が増えているが、腎臓移植は2009年で「生体」が全体の85%を占める。待機患者が多いため、心停止を含めた献腎移植を受けられるまで1人平均14年かかるとも言われており、依然として生体に踏み切るケースは多い。

 腹腔鏡手術は、カメラや電気メスを入れる穴3カ所(直径5ミリ―10ミリ)と、にぎりこぶし程度の腎臓を摘出するのに従前の4分の1程度の5―8センチの切開で済むのが特徴で、痛みや出血量が少ない。退院も早いという。

 同病院では、昨年5月から11―37歳の患者を対象に6例実施。いずれも生着している。

 生体腎移植の安全性強化へ、荒木助教らは最新の検査で移植を受ける患者の術後のリスクも詳しく調査。貧血が多い透析患者は輸血で拒絶反応につながる特殊な抗体ができている場合もあり、事前に免疫抑制剤などで治療している。

 腎臓に嚢胞(のうほう)が生じる「常染色体劣性多発嚢胞腎」で他臓器への合併症が起きた移植の難しい患者にも、詳細な調査で対応している。

 移植手術は医師8人が担当。チーフの荒木助教は東京女子医大や米国クリーブランドクリニックで計200例以上の生体・献腎移植を経験して準備を進めてきた。

 現在、県内で継続的に腎移植に取り組んでいるのは同大と国立病院機構岡山医療センター(同田益)の2カ所のみ。全国で透析患者が増加する中、荒木助教は「安全性を担保しながら症例を増やし、移植体制を強化したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年11月21日 更新)

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