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不育症患者の1割 気分障害疑い 岡山大大学院グループ調査 「精神的ケア必要」

江見弥生助教

 流産や死産を繰り返す「不育症」の患者のうち1割余りがうつ状態など気分・不安障害の疑いがあることが岡山大大学院保健学研究科の江見弥生助教らのグループの調査で分かった。第1子出産後に不育症になった人がより不安傾向が強いことも判明、精神的ケアの必要性をあらためて浮き彫りにした。

 厚生労働省の不育症に関する研究の分担研究の一つ。2008年5月〜10年1月に岡山大病院産科婦人科の不育症外来を初めて受診した女性91人(21〜43歳、流死産2〜7回)に調査した。気分・不安障害患者のスクリーニング(ふるい分け)に使う「K6」と、不安の強さを測定する「潜在性不安尺度(MAS)」という質問回答を点数化する二つの調査法を使用した。

 MASでは、軽いうつ状態やパニック障害など含む不安障害領域と判断する22点以上が10人(11・0%)、うつ病領域とされる27点以上は3人(3・3%)いた。

 一方、K6では、50%以上が気分・不安障害に該当するとされる9点以上が22人(24・2%)。両調査で点数の高い人は共通し、相関関係が認められた。

 流死産回数が増えると不安が強まる傾向もみられる。特に第1子を産んだ後に4回以上流死産した人(4人)が両調査とも最も点数が高く、同じ4回以上の流死産を経験し子どもがいない人を上回った。

 結果について江見助教は「以前は無事産めただけにギャップが大きく、自分の体の変化などに大きな不安を抱いているのではないか。子どもがいることが必ずしも不安の緩和にはつながっていない」と指摘する。

 同病院では「岡山県不妊専門相談センター」が不育症の相談に乗るほか、流死産した女性に対して、子どもとお別れする時間や場を設けるなど悲しみを緩和するグリーフケアを実施しているが、医療機関での取り組みはまだ少ないという。

 江見助教は「多くの人は話を聞いてあげるなどのケアをすれば心の回復はみられる。医療者が関心を持ち、患者が安心して悲しみを打ち明けられる環境をつくることが大切」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年11月29日 更新)

タグ: お産岡山大学病院

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