文字 

消化管出血  岡山済生会総合病院 24時間対応の内視鏡センター いざ 体の負担軽く検査・治療

胃潰瘍患者に内視鏡による止血術を行う医師=岡山済生会総合病院提供

(写真上段左から)石山修平内科医長、吉岡正雄センター長、塩出純二副院長(同下段左から)伊藤守 内科医長、藤原明子内科医長

 口腔(こうくう)から肛門まで、飲食物の摂取や消化・吸収、排せつ作用を担う消化管。生命の維持・増進を図るが、潰瘍やがんなど患うと出血を起こし、食道静脈瘤(りゅう)破裂では命にかかわる。岡山済生会総合病院は、体の負担が軽い内視鏡検査・治療を行う内視鏡センターを設け、内科、外科医らのチーム医療で消化管出血患者に24時間対応している。

 消化管は、口腔から咽頭、食道、胃、小腸、大腸を経て肛門に至る。出血を来す疾患は胃・大腸がん、食道炎、出血性大腸炎など。中でも多いのが胃・十二指腸潰瘍。ピロリ菌感染が一因だが「脳・心筋梗塞患者らが服用する抗血栓薬、解熱鎮痛剤が原因のケースが増えている。薬剤による出血は小腸、大腸でも起き、慎重な対応が必要」と塩出純二副院長(内科)は語る。

 症  状

 吐血や黒い便が出るときは食道、胃、十二指腸、赤や赤黒い下血がある場合は小腸、大腸が患部と疑われる。他にも、めまい、ふらつき、血圧低下、意識消失などを伴う。「嘔吐(おうと)物が気管に詰まって呼吸停止する恐れもあり、症状があれば、かかりつけ医や救急病院を受診するか救急車を呼んでほしい」と内視鏡センター長の吉岡正雄診療部長(内科)。

 同センターでは、内科の石山修平、藤原明子、伊藤守各医長らが内視鏡検査・治療に当たり、夜間は医師らを電話で呼び出す。消化管の2010年検査・治療は、上部消化管(食道から十二指腸まで)7840例、大腸3571例、膵(すい)・胆道402例、小腸67例の計1万1880例と岡山市内で最多を誇る。

 初期対応

 急患には診察、血液検査、点滴のほか、必要に応じてCT(コンピューター断層撮影)、緊急内視鏡検査を行い、止血処置を施す。「地域医療連携センターを設け、診療所からの急患はできるだけ受け入れている」(吉岡センター長)という。

 内視鏡による止血術は三つあり、患部の状況から使い分ける。内視鏡(直径1センチ強)を上部消化管は口から、大腸には肛門から挿入。出血している消化管の壁に、エタノールなどを注入するのが薬剤注入法。機械的止血法は金属クリップや輪ゴムで血管をふさぎ、熱凝固法は高周波電流で血管を焼き固める。

 出血源が不明の場合、栄養を吸収する重要な臓器・小腸から出血している可能性がある。小腸は約6~7メートルと長くて曲がりくねり、観察が難しいため新型の内視鏡を使う。

 ダブルバルーン内視鏡は、内視鏡をチューブの内側に通して二重構造にし、それぞれの先端に付けた風船を交互に膨らませる。尺取り虫のように進め、病変の発見、組織の採取、止血処置など行う。カプセル内視鏡は、口から飲んだ小型カメラ内蔵のカプセル(直径1・1センチ、長さ2・6センチ)が、ぜん動運動で移動しながら毎秒2枚ずつ撮影、患部を突き止める。

 診断・治療

 止血後、内視鏡で病巣組織を採取し、病理検査で診断する。胃・十二指腸潰瘍は薬物療法で治療するが、ピロリ菌感染が原因の場合は除菌療法が有効。同菌はウレアーゼという酵素で胃酸を中和して胃に生息、胃がんなども起こす恐れがある。

 ピロリ菌感染は、尿素を含む薬を飲み、吐き出す息を解析する尿素呼気試験、血液や尿、便検査などで分かる。抗生物質2種類と胃酸分泌抑制剤を1週間服用すれば、約8割の人が除菌に成功する。

 胃などの早期がんで根治可能なのが、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)。内視鏡の細い穴を通して特殊なナイフで、病変をはがし取る。10年は136例実施し、石山医長は「適応対象が約2センチまでだった従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)に比べ、大きな病変でも一度に切除できる」と話す。

 岡山済生会総合病院

住所 〒700―8511 岡山市北区伊福町1の17の18

電話 086―252―2211

メールアドレス byouin@okayamasaisekai.or.jp
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年01月17日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ