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カテーテル、内視鏡、周産期 岡山医療センター 先駆的な検査・治療 重症の難病患者救う

慢性血栓塞栓性肺高血圧症の患者のエックス線画像を見ながらカテーテル治療を行う循環器科の医師

松原広己臨床研究部長、山下晴弘消化器科医長、多田克彦産婦人科医長、中村信新生児科医長(写真右から)

カプセル内視鏡

 国立病院機構岡山医療センターはお産から高齢者に多いがんなどまで幅広く対応する岡山県内有数の急性期病院だ。近年は、厚生労働省指定の特定疾患(難病)の慢性血栓塞栓(そくせん)性肺高血圧症に対するカテーテル治療や、原因が分からないことが多かった小腸の病気を最新の内視鏡で検査、治療するなど先駆的な医療に力を入れている。リスクの高い赤ちゃんとお母さんを救う周産期医療にも実績がある。

 循環器科 

 カテーテルという細い管を血管に入れ、心臓の冠動脈や足の血管を治療する血管内手術を年500回以上行う。うち約100回に上っているのが、心臓の右心室から肺につながる肺動脈が血の塊(血栓)で詰まる慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療。手掛ける医療機関が全国でもわずかで、北海道から九州までの患者が受診する。

 患者は50~60代女性が多い。肺動脈の血圧が異常に高くなり、息苦しさを訴え死に至ることもある。重症の場合は手術で血栓を除くが、難易度が高い手術で、血栓が肺動脈の先端など取りづらい位置にあることも多い。

 岡山医療センターは2004年、重症患者の救命手段としてカテーテル治療を初めて実施。これまでに、手術が難しく薬も効かない約60人に行った。

 血流が急に回復すると、肺に水分がたまる肺水腫の副作用が起きるため、3カ月~半年の間隔を開け、左右の肺を2回ずつ治療する。すると、肺動脈の血圧が平均で半分に下がり、正常値に収まる。「息苦しさも劇的に良くなる」と松原広己臨床研究部長(循環器科医長)。今のところ、治療中やその後亡くなった患者はいない。

 この治療技術を学ぶため、東京の大学病院からも医師が研修に来ている。松原部長は「治療成績などエビデンス(根拠)がまだ十分でなく、全ての患者に行えるわけでないが、多くの病院で実績を積めば普及するだろう」と期待する。

 消化器科 

 口からだと胃の先、肛門からは大腸の先と遠い位置にあり、長く曲がりくねって検査が難しかった小腸。「暗黒大陸」といわれてきた7~8メートルの臓器の治療のため、ダブルバルーン内視鏡を2004年、カプセル内視鏡=写真=を07年、公的医療保険適用に合わせ、いち早く導入した。

 対象は下血など消化管出血の症状があり、胃や大腸内視鏡検査で異常がない患者。まず、長さ2・5センチ、直径1センチのカプセル型を飲んでもらい、小腸の中を移動しながら内部を撮影する内視鏡で原因を特定する。さらにバルーン型を口か肛門から挿入、先端の二つの風船を交互に膨らませて小腸を固定し、内視鏡を奥へと進め、止血したり病巣を切る。

 これまでにダブルバルーン型の検査・治療を約450例、カプセル型の検査を約250例重ねた。「以前は出血源の特定は難しかったが、6割の患者は分かるようになった。出血24時間以内なら、ほぼ百パーセント特定できる」と山下晴弘消化器科医長。原因は血管の異常や良性腫瘍が多い。

 最近は機器の改良によりリアルタイムで小腸内を見られ、救急患者にも威力を発揮している。山下医長は「おなかを切らずに済み、体に優しい治療。効果は大きい」と話す。

 周産期センター

 岡山県内で倉敷中央病院と並び2カ所しかない総合周産期母子医療センターは、小さな赤ちゃんの出生が予想される切迫早産や、妊娠高血圧症候群など合併症のある妊婦、消化器や心臓に先天的な病気のある赤ちゃんらをケアしている。

 中でも、千グラム以上1500グラム未満の極低出生体重児の出産は毎年30人、千グラム未満の超低出生体重児は20人、双子など多胎児は40組前後に上る。救命率は百パーセント近い。

 母体・胎児集中治療室(MFICU)6床、新生児集中治療室(NICU)18床を備える。高度な医療を求め、妊婦の救急搬送や外来紹介は岡山県内外の医療機関から年200~250件に上る。

 出産までは主に産婦人科、赤ちゃんは新生児科が担当。赤ちゃんに病気が見つかれば、小児外科の出番となる。多田克彦産婦人科医長は「診療科の連携は良く、協力して両親への十分な説明を心掛けている」、中村信新生児科医長は「赤ちゃんの命を救うだけでなく、元気に助けるのが目標。良い家族関係を築けるよう両親や兄姉もサポートしたい」と語っている。

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 国立病院機構岡山医療センター

住所 〒701―1192 岡山市北区田益1711の1

電話 086―294―9911

メールアドレス

   info@okayama3.hosp.go.jp
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年02月07日 更新)

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