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広がる漢方治療 自然治癒力高め体質改善

漢方薬の特徴

漢方治療の効果が期待されるもの

 「何だか体の調子がおかしい」。そう思って検査を受けても結果は異常なし―。そんな経験を持つ読者はいないだろうか? 漢方医学ではこうした健康と病気の境界を「未病」と呼び、その治療を得意としてきた。近年は全国の大学医学部・医科大で漢方医学教育が取り入れられ、漢方治療も幅広い分野へと広がっている。漢方治療の特徴について、日本東洋医学会漢方専門医でもある川崎医大川崎病院(岡山市北区中山下)の沖本二郎副院長(内科)に聞いた。



 漢方は漢(中国)の時代に体系化され、日本で独自の発展を遂げた伝統医学。臓器別にピンポイントで“病気”を治す西洋医学に対し、心と体を一体のものとして“病人”を治す医学とも言われる。心身のバランスを整えて自然治癒力を高め、健康回復や病気になりにくい体質へ改善を図ろうとするのが特徴だ。そのため、例えば同じ風邪症状の場合、西洋医学ではどの患者の薬も基本的に同種だが、漢方では患者個人の体質に合わせて処方薬が異なることもある。

 「だからといって、漢方と西洋医学は対立するものではありません」と沖本副院長。漢方は「だるい」「食欲不振」「手足が冷える」「イライラが続く」など、西洋医学では具体的な病名のつきにくい症状(不定愁訴)の改善に効果が高いとされ、「西洋医学の足らずを補い、両方の良いところを取った“和洋折衷医学”で患者のQOL(生活の質)を高めていけば良いのです」と強調する。

 実際、更年期障害やアトピー性皮膚炎、うつ、不妊症、認知症、便秘、ぼうこう炎、前立腺肥大症…と漢方が治療に取り入れられるケースは多く、西洋薬との併用も含めると医師の8割が漢方薬を使用しているとの調査結果もあるほど。現在はがん治療や外科手術の際に用いられることも増えているといい、「漢方でがん自体を消すことは難しいですが、つらい抗がん剤の副作用を軽減したり、手術前後の体力回復には効果があります」。

 約150種類に上る漢方薬が保険適用されており、「治療を希望する人は、まず漢方を手掛ける医師に相談を」と沖本副院長。日本東洋医学会漢方専門医は同学会ホームページ(http://www.jsom.or.jp/)などで探すことができる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年03月07日 更新)

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