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肝炎対策と拠点病院の役割 (1) 岡山大大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学教授 山本和秀

山本和秀教授

 わが国の肝がんによる死亡者数は年間約3万3千人と非常に多く、岡山県でも年間約660人が死亡しています。肝がん・肝硬変のほとんどは肝炎ウイルスが原因で、特にC型肝炎ウイルスによるものが7〜8割を占めています。

 C型肝炎ウイルスの感染者は全国で約150万人もいるとされていますが、自覚症状がないため気がつかないうちに、慢性肝炎から肝硬変・肝がんへと進行します。そのため、感染者の早期発見と治療の目的で、国の「C型肝炎等緊急総合対策」に基づき、2002年度から市町村の基本健康診査において、肝炎ウイルス健診を実施しています。しかし、健診受診率が低い、要診察とされた方が医療機関を受診しない、またたとえ医療機関を受診しても必ずしも適切な医療が提供されていない、などの問題点が指摘されています。

 このような問題点を解決するため、06年より各都道府県に肝炎診療協議会が設置され、(1)要診療者に対する保健指導(2)かかりつけ医と専門医療機関の連携(3)高度専門的ないし集学的な治療を提供可能な医療機関の確保(4)受診状況や治療状況等の把握、医療機関情報の収集と提供、人材の育成―などについて検討が開始されました。さらに、07年より肝炎検査で発見された肝炎患者を適切な医療に結びつけるため、肝疾患診療体制の構築が図られることになりました。

 岡山県では、岡山大学病院を肝疾患診療連携拠点病院として、他の専門医療機関と連携しつつ、診療体制の構築を進めています。専門医療機関については二次、一次専門医療機関を設け、かかりつけ医と連携をとりながら診療する体制を構築しています。

 二次専門医療機関は(1)肝疾患に関する専門的な知識を持つ医師による診断と治療方針の決定が行われる(2)インターフェロンなどの抗ウイルス療法を適切に実施できる(3)肝がんの高危険群の同定と早期診断を適切に実施できる―の条件を満たす医療機関を選定しています。県南東部では岡山済生会総合病院、川崎医大川崎病院、岡山市立市民病院、県南西部では川崎医大付属病院、倉敷中央病院、松田病院、県北部では津山中央病院が選ばれています。

 一次専門医療機関は日本肝臓学会専門医、肝疾患を診療・治療できる技量のある医師、あるいは肝疾患に関する研修会に3回以上参加した医師が1人以上いる医療機関とし、県内で106医療機関(県健康推進課のホームページに掲載)が認定されています。

 肝疾患診療連携拠点病院の役割は、肝がんに対する専門的な治療および緩和ケアを実施するとともに、セカンドオピニオン機能、専門医療機関の連携、県民に対する肝疾患の相談対応、県内の肝炎医療従事者を対象とした肝炎医療研修の開催などです。

 具体的には、岡山大学病院内に肝炎相談センターを開設し、専任の看護師および医師が患者さんなどからの電話相談を受け付け、必要に応じて面談も行っています。また二次専門医療機関を集めて連絡協議会を開催し、さらに一次医療機関を対象とした研修会を年2回実施しています。このような活動を通じて、岡山県の肝疾患診療の質向上や診療レベルの地域格差解消に努めています。



 岡山県医師会が3月、肝疾患に関する座談会を岡山市内で開き、肝臓専門医らがB型、C型肝炎から肝硬変、肝がんへの進行を防ぐ対策を話し合った。肝がんの撲滅を目指して、同座談会出席者に寄稿してもらう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年05月02日 更新)

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