文字 

生体肺区域移植実現へ 岡山大病院 大藤准教授ら 幼児向け、世界初目指す

幼児向け「生体肺区域移植」

大藤剛宏准教授

 重い肺の病気に苦しみながらも、サイズなどの問題から移植の機会が巡ってこない幼児らを救おうと、岡山大病院呼吸器外科の大藤剛宏准教授らのグループが、成人の肺下部(下葉)の一部だけを切り取って行う特殊な「生体肺区域移植」の研究に取り組んでいる。年内にも動物実験に着手し、早期の臨床応用を目指す。ヒトでの症例はなく、実現すれば世界初。

 肺移植は現在、脳死と生体で実施。原則として、脳死はドナー(臓器提供者)から提供された肺全部を、生体は成人の身内2人がドナーとなり、それぞれの下葉を取り出して移植する。しかし、幼児らの場合は成人の肺は大きすぎるため手術ができず、同年代でサイズが合う脳死ドナーからの移植が最適とされてきた。

 大藤准教授が構想する「区域移植」は成人2人の下葉上部(肺全体の数%)を切り取って幼児らに移植する手術方法。サイズの問題をクリアできる上、20%の肺を取り出す成人間の生体移植よりドナーの負担も軽くなるという。

 大藤准教授らは呼吸器外科医ら10人で研究チームをつくり、年内にも動物実験に着手する方針。ただ、術後は患者の体が大きくなる一方で、肺自体は成長しないため、将来的には脳死による再移植が必要になる。

 改正臓器移植法の全面施行(2010年7月)で15歳未満の小児も脳死臓器提供が可能となったが、これまでに現れた小児ドナーは関東甲信越地方の病院で4月12日に脳死と判定された少年(10歳以上15歳未満)のみ。親の心情や虐待の有無の確認など、さまざまな面で成人より壁が高く、関係者の間では提供事例は限られるとの見方が強い。幼児には肺移植の機会がほとんどないのが現状だ。

 大藤准教授は「法改正で幼児に関する相談は増えているが、救う方法がなかった。手法を早く確立させ、小児患者や家族に希望を与えたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年05月05日 更新)

タグ: 岡山大学病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ