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乳がん(川崎医大病院) 診断 早期はほとんど無症状

マンモグラフィー画像。矢印部分が大きさ2センチ台の乳がん=川崎医大病院提供

中島一毅・乳腺甲状腺外科学講師

 ■ チーム医療で患者要望に応える
 ■ 乳房温存手術1000例超す


 女性のがんで一番多い乳がん。推定で年間約4万5千人が罹患りかん、一生涯では18人に1人がかかるといわれる。4月に亡くなった女優田中好子さんも乳がんだった。川崎医大病院(倉敷市松島)は1975年に乳腺甲状腺外科を開設、全国でも最も早期の87年から乳房温存手術を行い、同手術の症例数は千例を超す。同科を中心に形成外科・美容外科、放射線科(治療)、臨床腫瘍科などが連携し診療に当たっている。

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 乳房に違和感を感じる。痛みがある。乳頭から赤茶けた分泌物が出た。

 そうした自覚症状が医療機関を受診する主な理由と言われるが、「ほとんどの早期乳がんは無症状」と中島一毅・乳腺甲状腺外科学講師。「症状が出てからでは、ある程度進行した状態のことが多い。だからこそ検診が必要」と強調する。

 早期発見によって生命予後(余命に関わる予測)が改善することは、多くの臨床試験で統計学的に証明されている。ところがマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)検診の現状は、欧米が受診率80%以上なのに対し、日本は10%台(岡山県約15%)と著しく低い。

 マンモグラフィー検診の結果が「要精査」となり、川崎医大病院を受診した場合は、外来でまず乳房超音波検査を行う。同検査で「がんの疑いが濃いか、がんでない可能性が高いか、9割程度鑑別できる」(中島講師)。

 がんでない可能性が高い場合は細胞診(病変部に細い針を刺し、注射器で細胞を吸い取る検査)で良性を確認し、がんを疑った場合は針生検(組織検査)を行う。

 針生検は局所麻酔をして、超音波画像を見ながら針を刺し、腫瘍から鉛筆の芯ほどの組織を取る。病理専門医が顕微鏡で観察、1週間で確定診断がつく。がんの場合は、どのような種類の乳がんか、どれぐらい再発しやすいタイプのがんか、どの薬剤が効くか―が同時に判断される。

 このデータから、手術と術後補助療法(手術後に行う抗がん剤などの治療)が選択される。また乳がんの種類によっては、術後補助療法を術前に行う。先に薬剤を使い、反応を見て次のステップである手術に進む。この場合、がんが小さくなれば乳房温存の可能性が高まる。

 ところで、がん告知は極めてデリケートな問題だ。中島講師は「乳がんの患者さんの50%が、うつになると言われている。患者さんの性格を配慮した上で、告知のタイミングを計るように留意している」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年05月16日 更新)

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