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(11)子宮筋腫 川崎医大産婦人科教授 下屋浩一郎

図1:子宮の構造

図2:子宮筋腫の部位による分類

 子宮は図1に示すように内側から子宮内膜、平滑筋という筋肉でできている子宮筋層、漿膜しょうまく(腹膜)の3層構造になっています。子宮筋層にできる良性の腫瘍が子宮筋腫です。

 子宮筋腫は婦人科の腫瘍性疾患で最も高頻度で、30歳以上の女性では20〜30%の方が有していて、顕微鏡レベルで見つかるものも含めると約75%にもなると言われています。子宮筋腫の発育には女性ホルモンが関与していて、初経前にみられることはなく、閉経後は縮小します。また、子宮筋腫は多発性に発生することが多いのも特徴です。

 子宮筋腫はできる場所によって図2のように漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫に分類されます。時に筋腫が膣ちつ内まで脱出することがあり、筋腫分娩ぶんべんと呼びます。

 症状は、月経量が増加する過多月経や月経痛、膀胱ぼうこうや直腸などの周辺臓器の圧迫症状があり、疼痛とうつうや不妊症、不育症の原因となることもあります。さらに、妊娠中の流・早産や分娩後の出血などの原因となることもあります。子宮筋腫の発生場所によって表1のように症状の程度が異なります。

 診断には内診や超音波検査が有用です。MRI(磁気共鳴画像装置)検査も子宮筋腫の部位、個数の確認等に有効です。急に子宮筋腫が増大した場合や閉経後に増大した場合には悪性の平滑筋肉腫との区別が必要となることがあります。

 典型的な子宮筋腫で症状もない場合には3〜6カ月ごとの定期的な診察で大きさや症状の変化を観察します。

 治療を必要とする子宮筋腫は、悪性の平滑筋肉腫の可能性が否定できない場合、症状がある場合(過多月経のために貧血、生活に支障をきたすような月経痛、不妊症や不育症の原因と考えられる―など)、妊娠中や分娩時に障害を引き起こす可能性が高い場合などが挙げられます。

 治療は、表2のようにまとめられます。症状、年齢および挙児希望(子どもが欲しい)があるかどうかに応じて治療法を選択します。薬物療法として貧血改善のために鉄剤の補充を行う場合や、低用量ピルを用いて月経量の調節や月経痛の軽減を図ることもあります。

 Gn―RHアゴニスト療法とは、注射や点鼻薬を用いて女性ホルモンの分泌を抑えて閉経状態と同じホルモン状態にして、子宮筋腫の縮小を図る方法です。一時的には子宮筋腫の縮小が期待できますが、更年期症状や骨粗鬆症こつそしょうしょうなどの副作用のため6カ月間の投与に限られていて多くの場合、治療終了後には子宮筋腫が元の大きさに戻ってしまいます。このため手術前の治療や閉経前の方の逃げ込み療法(手術を回避して閉経まで逃げ込む治療)として用いられます。

 手術療法としては、根治療法として子宮摘出手術があります。挙児希望があり子宮温存を希望される方には子宮筋腫だけを切除して子宮を温存する子宮筋腫核出術を行いますが、手術後に子宮筋腫が再発する可能性があります。子宮筋腫の発生部位、大きさなどによって手術方法として開腹手術、膣式手術(おなかを開けないで下から手術する方法)、内視鏡手術などの選択肢があるので主治医の先生とよく相談して手術法を決める必要があります。

 新たな治療法として自費診療になりますが、子宮動脈塞栓そくせん術という治療法があります。これは、子宮を栄養する子宮動脈という血管を詰まらせて子宮筋腫の縮小を図る方法で1995年ごろから実用化され、約90%の有効性が示されています。比較的新しい治療法であり、副作用として発熱、疼痛などがあります。

 子宮筋腫そのものは良性の疾患ですので症状、挙児希望、年齢、子宮筋腫の大きさ・個数等を考慮して最善の治療法を選択することが重要です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年05月16日 更新)

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