乳がん(川崎医大病院) 手術 術前に抗がん剤使う場合も
川崎医大病院の乳がん手術は2010年228例、うち乳房温存手術162例で、温存率71・1%(全国平均約60%)だった。10年末までの温存手術の累計は1090例。
温存手術の適応は通常、しこりの大きさ3センチ以下。3センチを超すとガイドラインでは適応外となるが、同病院では07年から、3センチを超えても5センチまでなら術前化学療法(抗がん剤)でがんを小さくした後、施術している。
「10年は、この方法で10人に乳房温存ができた。5センチまでの限局した(がんが乳管の中を広がっていない)がんなら乳房温存手術が可能になる例が多い」と、園尾博司・乳腺甲状腺外科学教授(がんセンター長)は話す。半数の患者は、がんが触知しなくなり、2割はがんが完全に消失するという。
術前に点滴で用いる抗がん剤は、アントラサイクリン(3カ月)とタキサン(4カ月)の2種類。通常はアントラサイクリンだけ。脇の下のリンパ節に転移しているなど、がんが進行している場合はタキサンも使う。
術前化学療法にも課題はある。一つは同療法の効果が不十分だった場合、術後の抗がん剤にアントラサイクリン、タキサン以外の何を使うか。現状では、決定的に有効な薬が分かっていない。
もう一つは、同療法でがんを小さくして温存手術をすると、通常の温存手術よりも局所再発しやすいと言われている点。ただし同病院では「術前化学療法による局所再発例はない」(園尾教授)。
同病院でのセンチネルリンパ節生検=図1参照=は、しこりの大きさ3センチ以下を対象に02年から行っている。10年4月から保険適用。同年129例に行った。
同生検は、色素や無害な放射性物質を乳房皮内などに注射する。がんが最初に入る脇の下のリンパ節(センチネルリンパ節と呼び、1、2個ある)を見つけ、手術中に顕微鏡検査を行う。これに転移がなければそれ以上、脇の脂肪やリンパ節を取らない。
園尾教授は「リンパ節全摘の場合は1、2割の患者さんに腕の腫れがみられるが、センチネルリンパ節生検では術後、腕の腫れが起こらない利点がある」と言う。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
温存手術の適応は通常、しこりの大きさ3センチ以下。3センチを超すとガイドラインでは適応外となるが、同病院では07年から、3センチを超えても5センチまでなら術前化学療法(抗がん剤)でがんを小さくした後、施術している。
「10年は、この方法で10人に乳房温存ができた。5センチまでの限局した(がんが乳管の中を広がっていない)がんなら乳房温存手術が可能になる例が多い」と、園尾博司・乳腺甲状腺外科学教授(がんセンター長)は話す。半数の患者は、がんが触知しなくなり、2割はがんが完全に消失するという。
術前に点滴で用いる抗がん剤は、アントラサイクリン(3カ月)とタキサン(4カ月)の2種類。通常はアントラサイクリンだけ。脇の下のリンパ節に転移しているなど、がんが進行している場合はタキサンも使う。
術前化学療法にも課題はある。一つは同療法の効果が不十分だった場合、術後の抗がん剤にアントラサイクリン、タキサン以外の何を使うか。現状では、決定的に有効な薬が分かっていない。
もう一つは、同療法でがんを小さくして温存手術をすると、通常の温存手術よりも局所再発しやすいと言われている点。ただし同病院では「術前化学療法による局所再発例はない」(園尾教授)。
同病院でのセンチネルリンパ節生検=図1参照=は、しこりの大きさ3センチ以下を対象に02年から行っている。10年4月から保険適用。同年129例に行った。
同生検は、色素や無害な放射性物質を乳房皮内などに注射する。がんが最初に入る脇の下のリンパ節(センチネルリンパ節と呼び、1、2個ある)を見つけ、手術中に顕微鏡検査を行う。これに転移がなければそれ以上、脇の脂肪やリンパ節を取らない。
園尾教授は「リンパ節全摘の場合は1、2割の患者さんに腕の腫れがみられるが、センチネルリンパ節生検では術後、腕の腫れが起こらない利点がある」と言う。
(2011年05月16日 更新)