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(3)C型肝炎と二次医療機関の役割 倉敷中央病院消化器内科部長 下村宏之

下村宏之・倉敷中央病院消化器内科部長

 C型慢性肝炎を原因から治療するためには、C型肝炎ウイルス(HCV)を体内から駆除する必要があります。将来は、インターフェロンを用いない治療法が開発されると期待されますが、現在はインターフェロン治療に、その効果を高めるための薬剤を併用して治療しています。また、患者さんの体質やウイルスの遺伝子解析によって治療効果を予測し、治療を行うときの参考にするようになっています。

 倉敷中央病院では、これまでのインターフェロン治療で、難治性といわれる1型高ウイルス量の患者さんに対して約40%、それ以外の患者さんには約80%のウイルス学的治癒が得られています。最近の標準治療であるリバビリン+ペグインターフェロン治療だけに限ると50%以上となっています。

 現在のインターフェロン治療では、導入時の2週間程度を入院で、その後は外来で治療することが多く、地域の専門病院では外来でインターフェロン注射を続けている患者さんを多く見かけます。治療期間は、1年半あるいはさらに長期間で行われるようになりました。このままでは、肝炎専門医療機関の外来は、インターフェロン治療の患者さんであふれてしまいます。患者さんからも、待ち時間が長い、通院時間がかかるなど、不満の意見を頂いています。

 そこで、かかりつけの医療機関にインターフェロン治療の一部をお願いし、肝炎専門医療機関と両方が主治医として治療に当たる、地域連携が進められるようになりました。かかりつけ医は必ずしも肝臓疾患の治療経験が豊富な方ばかりではなく、非専門の医師が多いのですが、治療の手順や注意すべき事項をあらかじめ連絡し、治療中はお互いに情報を共有しながら治療を進めています。

 私の経験でも、治療中高まっていた患者さんのストレスがかかりつけ医で注射をお願いしてから軽快し、食欲低下や倦怠けんたい感などの副作用が改善した結果、治療を完遂でき、ウイルス学的治癒も得られた症例がありました。

 かかりつけ医と肝炎専門医をつなぐ方法として、岡山県ではC型慢性肝炎地域連携クリティカルパス(もも肝C)を作成し、利用しています。患者さんに安心・安全な治療を提供し、かかりつけ医ともスムーズに連携を進めています。また、説明図を用いて、患者さん自身にも長期間の治療の流れを理解いただくようにしています。

 患者さんが安心して治療を受けられる体制にするには、一つの医療機関だけでなく、地域の医療機関がそれぞれの能力・機能を生かしていく必要があります。肝炎専門医療機関のうち、肝がんの治療もでき、一般医に対する肝炎医療研修の開催、セカンドオピニオン機能または施設間連携が可能な施設は「二次専門医療機関」として、地域の中核的役割を果たしています。現在8カ所(岡山済生会総合病院、岡山大学病院、岡山市立市民病院、川崎医大川崎病院、川崎医大病院、倉敷中央病院、倉敷市の松田病院、津山中央病院)が認定されています。

 このような医療機関の連携は、インターフェロン治療が一段落しても、その後の検査や治療が肝がんの早期発見にとって重要です。肝炎・肝硬変患者さんを一生にわたって連携して診療するために、岡山県では「もも肝S」という地域連携パスも作成しています。肝炎ウイルスの有無、肝機能の状態など、心配がありましたら、気軽にかかりつけ医にお尋ねください。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年06月06日 更新)

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