文字 

肝がん(岡山済生会総合病院) 手術 腹腔鏡下でも症例重ねる

三村哲重副院長

仁熊健文・外科主任医長

【写真上】肝がんの術中超音波画像。がんや肝静脈の位置が確認できる=岡山済生会総合病院提供【同下】腹腔鏡下切除に適した部位

 岡山済生会総合病院での肝がん(転移性含む)切除術は2010年67例。このうち、肝細胞がん46例など原発性肝がんは53例を数える。同年4月、保険適用となった腹腔ふくくう鏡下手術は「適応対象がまだ限定的だが、開腹手術より体への負担が軽い」(仁熊健文外科主任医長)として症例を積み重ねている。

 肝切除術は、最も確実にがんを取り除ける治療法。だが手術適応か否かは、肝機能(予備力)と腫瘍条件によって決まり、肝障害度がAかBで腫瘍数が3個までが対象となる。

 比較的大きな腫瘍などは手術が選択されるが、肝臓の予備力が良くないと、術後に肝不全を招く恐れがある。そのため、術前にICG(インドシアニングリーン)やアシアロシンチグラフィーといった検査をし、肝予備力を判断する。

 ICGは緑色の色素で、静脈注射し、15分後に採血した血中の色素残存量から肝臓の異物排せつ能力を調べる。アシアロシンチは、肝細胞のアシアロ糖タンパク受容体が放射性医薬品を取り込む様子から、肝左葉、右葉の代謝機能を見る。これらの検査により「手術で残す部分の肝予備力を正確に予測でき、より安全に手術できる」と三村哲重副院長(外科)は話す。

 術前に肝臓の腫瘍、脈管を立体的に映し出す肝切除シミュレーションソフトを用い、切除範囲など決定。手術は全身麻酔をし、腹部を30センチ近く切開して行う。肝臓は門脈、肝動脈、肝静脈といった血管、胆管が多く走る。肉眼で見えない血管の位置を超音波検査で把握し、出血を防ぎながら、がんを手際よく切除する。

 肝細胞がんは再発率が高いのが特徴で、同病院でも切除術をした患者の約7割が5年以内に再発しているが、5年生存率は62・8%。「初回の手術で肝予備力があまり落ちていなければ、再手術ができる」と三村副院長は説明する。

 腹腔鏡下手術は、おなかに小さな穴を4、5カ所開け、内視鏡や手術器具を入れて行う。内視鏡が映し出す画像で腹腔内を確認し、電気メスなどでがんを切除、回収する。

 おなかを10センチ前後切開し、腹腔鏡を補助的に使う「ハイブリッド手術」もあり、「手術時間は通常3〜4時間で開腹手術と変わらないが、在院日数は約1週間短い10日ほどで済む」と仁熊主任医長。

 同病院は08年から腹腔鏡下手術を16例実施し、同手術10例以上の経験を持つ医師配置など、保険適用に必要な施設基準をクリア。大量出血のリスクも考え、現在は肝左葉の外側区域など=図参照=にある約5センチまでのがんに限定しているが「安全性が確保されれば適応範囲が拡大されるだろう」と仁熊主任医長は見る。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年06月20日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ