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肝がん(岡山済生会総合病院) 肝動脈(化学)塞栓療法 カテーテル使い血管封鎖

安井光太郎・放射線科主任医長

肝動脈(化学)塞栓療法

血管撮影装置とCTが一体となった「IVR―CT」

 手術やラジオ波焼灼術ができない進行がん患者に行われることが多いのが肝動脈塞栓術(TAE)。がんに栄養を送る血管を封鎖し、がんを兵糧攻めにする。抗がん剤と造影剤を混ぜて注入する肝動注化学療法を併用する場合は、肝動脈化学塞栓療法(TACE)と呼ばれる。

 肝臓には二つの血管が流れ込み、正常な肝細胞は主に門脈、がん細胞は肝動脈から栄養を受けている。これを利用し、細い管・カテーテルを使ってがんを直接たたく。

 局所麻酔をし、脚の付け根から動脈にカテーテル(直径約1ミリ)を挿入。腫瘍近くの肝動脈まで進め、抗がん剤と肝がんに取り込まれやすい造影剤・リピオドールを混ぜて投与する。さらに、約1ミリ角大のゼラチンスポンジを注入して血管を詰まらせ、がんを死滅させる。

 「ゼラチンスポンジは約2週間で自然に溶け、血流は再開する。それまでに、がん細胞が死ぬ仕組み」と安井光太郎・放射線科主任医長。副作用として腹痛、吐き気、食欲不振、発熱などが見られ、肝機能も一時悪化するが約1週間で回復する。治療時間は平均1時間半で、1週間~10日で退院できる。

 岡山済生会総合病院では、血管撮影装置とCTを組み合わせた「IVR―CT」も使い2010年、TACEを肝細胞がんの162例に実施。「治療回数はがんの大きさや範囲によって決まるが、体への負担が軽く10回以上行っている患者もいる。治療後の5年生存率は29・4%」という。

 治療対象の制限が少なく、がんが4個以上など多発している場合に適する。肝臓の下部中央にあり、血管が出入りする肝門部周辺などは治療が難しいが「ラジオ波焼灼術などと併用すれば効果が高まる」と安井主任医長は話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年06月20日 更新)

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