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(4)一次専門医療機関の役割 川口メディカルクリニック院長 川口光彦

川口光彦院長

 基幹病院とかかりつけ医の間に良好な病診連携を構築していくことは、患者さんにとって多大な利益をもたらすと考えられています。良好な病診連携構築に関して現在、行政側も深く理解を示し、多くの医療機関は病診連携の機構整備に日夜大きな努力を払っています。

 ただそれでも、基幹病院での診療待ち時間が長いなど、まだまだ解決しなければいけないことがたくさんあるのも事実です。私も5年前まで岡山済生会総合病院で肝臓専門医として従事し、患者さんの満足度を上げる仕組みについて長年研究してきました。

 最近になって厚生労働省は、肝臓病診療において拠点病院・専門医療機関・かかりつけ医が協調する仕組みとして、地域における肝炎診療ネットワークの構築を進めています。受診勧奨と肝炎ウイルス検査後のフォローアップを実施し、肝炎患者の適切な医療機関への受診を促す対策を提示し、そのために国は検査後のフォローアップや受診勧奨等の支援を地域や職域で中心になって進める人材育成を推進するという指針を示しました。

 一方、岡山県は厚生労働省の提言に先立って、2007年に肝炎対策事業を開始しました。肝がんに対する治療が可能な肝臓専門基幹病院(8病院)を二次専門医療機関、インターフェロン治療などの抗ウイルス療法が可能な肝臓専門医療機関を一次専門医療機関(106医療機関)とする肝炎専門診療機構を設定しました。

 ただし、この機構を運用していく中で、一次、二次専門医療機関、かかりつけ医の区別、特に一次、二次専門医療機関の違い、一次専門医療機関の役割があいまいという問題点が分かってきました。岡山県が提唱した肝炎対策事業を成功させるためには、一次専門医療機関の役割を明快にすることが非常に大切と考えます。では一次専門医療機関が担う役割とは一体、どのようなことが考えられるのでしょうか?

 (1)かかりつけ医と二次専門医療機関との良好な病診連携における橋渡し

 (2)二次専門医療機関の業務を一部引き受ける

 (3)かかりつけ医との勉強会を定期的に開催する

 (4)住民への啓蒙けいもう活動を官民一体となって行う―など

 以上のようなことを一次専門医療機関の間で、さらに煮詰めて議論していきたいと思います。

 さて、われわれは肝疾患の連携を強化していくために「もも肝Cパス」「もも肝Sパス」という冊子を作成しました。かかりつけ医と患者さんと肝臓専門医が、患者さんの診療内容を共有するためのパス誌です。まだまだ一般に啓蒙普及できていない点は否めませんが、さらに岡山県主導で新たな「もも肝手帳」も作り、秋ごろ患者さんに配布する予定です。

 最寄りに肝臓専門医がいるかどうかを知りたいときは、岡山県庁内の健康推進課に問い合わせていただくか県のホームページをご覧ください。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年07月04日 更新)

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