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大腸がん(岡山大学病院) 内視鏡治療 ESDで対象拡大

大腸がんの治療に使う内視鏡を手にする河原講師=岡山大学病院

岡山県内がん診療連携拠点病院の大腸がん治療

 がんが大腸表面の粘膜にとどまる早期か、その下の粘膜下層にわずかに進行するまでなら、肛門から内視鏡を入れて切る治療が可能だ。外科手術に比べ患者の体の負担は軽い。特に近年、内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)という新たな治療法が始まり、岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗講師は「従来なら外科手術が必要だった大きながんにも治療対象が広まった」と普及を目指している。

 従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)は内視鏡の先端から出したワイヤをがんにかけて焼き切っていた。ただ、がんが大きいと分割切除せざるをえず取り残しの恐れがあるため、治療対象は最大径が2センチ未満のがんに限られていた。

 一方、ESDは電気ナイフでがん周囲に切り込みを入れ、粘膜下層ごとはぎ取る。がんが深く進んでいなければ、大きさにかかわらず一度で切除できる。

 もともとは胃がんの治療で普及した方法だが、大腸の壁は厚さが5〜8ミリで胃の半分ほどと薄く、高度な治療技術が必要とされる。このため、大腸がんでは公的医療保険がまだ適用されていない。

 河原講師はこれまでにESDで胃がん約1400例、大腸がん約200例を治療。安定した治療成績が認められ、同病院は2009年、保険が一部適用される先進医療での大腸ESDを、全国の医療機関で最初に厚生労働省から認められた。現在は津山中央、香川県立中央、三豊総合病院、福山医療センターなど全国約140病院が認定を受けている。

 岡山大学病院では、がんの大きさが2センチまでは安全性の高いEMR、それより大きい場合はESDで治療している。治療は平均1時間〜1時間半で、入院期間は1週間程度。

 「がんが肛門近くにあり、外科手術だと人工肛門になる場合も、内視鏡治療なら肛門を温存できるのもメリット」と河原講師。ただ、治療後の組織検査でがんが粘膜下層深くに進んでいるのが分かった場合、あらためて手術が必要になる。このため、「術前の診断がますます重要になった」と強調している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年07月18日 更新)

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