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中皮腫増殖仕組み解明 早期診断システム期待 岡山大大学院・豊岡講師ら 抑制RNA特定

豊岡伸一講師

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科呼吸器・乳腺内分泌外科学の豊岡伸一講師らの研究グループは、アスベスト(石綿)が主な原因とされる悪性中皮腫細胞内にある特定のマイクロRNA(リボ核酸、miR)が、同細胞の増殖抑制に深く関わっていることを突き止めた。これまで不明だった同細胞の増殖メカニズムの一部を解明。早期診断システムの開発につながる成果として注目を集めている。

 体内には、がん細胞に自滅を促す遺伝子「p53」が存在しており、肺がんや乳がんなど多くのがん細胞でp53に異常がみられるという。だが、悪性中皮腫細胞にはp53の異常がないことから、豊岡講師らはp53の働きを伝えるmiRの損傷が悪性中皮腫の発症に関係していると想定。2009年から、1千種類を超えるmiRを調べていた。

 悪性中皮腫の増殖抑制に関係していたのは「miR34」。フラスコ内に入れた研究用の悪性中皮腫の細胞株にmiR34を導入すると増殖がほぼストップ。miR34を入れなかったフラスコに比べ、約5倍の増殖抑制効果があったという。研究成果は6月に米専門誌電子版に掲載された。

 マウスによる実験も昨夏から実施しており、miR34が中皮腫細胞の増殖を抑える働きをしている結果が出ているという。

 中皮腫細胞内では、「p53がmiR34を介して腫瘍を自滅させる」という本来機能を阻害する「メチル化」が高い頻度で発生。miR34が異常をきたしているメチル化の状況を血液から判別すれば、早期診断が可能になることから岡山労災病院(岡山市南区)や川崎医科大(倉敷市)と協力し、診断システムの開発を進めている。

 豊岡講師は「悪性中皮腫は抗がん剤や放射線治療が効きにくい。早期診断できれば、外科手術で完全な切除ができ、完治する場合も少なくない。有効な診断システムづくりを急ぎたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年08月10日 更新)

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