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胃がん(倉敷中央病院) 外科手術 切除範囲縮小し、機能を一部温存

河本和幸外科部長

 胃がんの死亡率は年々減少し、早期発見できれば「治せる」がんになってきた。治療の基本はがん病巣ごと胃を切除することだが、近年、体の負担を軽くしたり、胃の機能を残せるよう、術後の生活を考慮したさまざまな手術法が導入されている。体調管理には、患者自身が食事メニューや食べ方を工夫することも必要だ。倉敷中央病院(倉敷市美和)でのケースを紹介する。

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 倉敷中央病院は昨年205例の胃がんの外科手術を行った。胃の大半を切除する手術がまだ多いが、河本和幸外科部長は切除範囲を縮小し、胃の機能を一部温存する術式も徐々に拡大している。

 近年の技術的進歩は腹腔(ふくくう)鏡と自動縫合器の導入によるところが大きい。進行がんに対する腹腔鏡手術の評価はまだ定まっておらず、同病院は早期がんに限って行っている。

 自動縫合器は胃の出口側の幽ゆう門側もんそく切除術や、切除後の胃を十二指腸とつなぐ再建術にも使われるようになった。「切除と縫合が同時にできて手術時間が短くなり、個人の技量差も少ない。術後の縫合不全も減っている」と河本部長はメリットを説明する。

 手術法としては、胃の全摘または3分の2以上を切除し、胃に接する第1群リンパ節と胃に流れ込む血管沿いの第2群リンパ節を郭清する「定型手術」が大部分を占めている。

 しかし近年、胃の出口を開閉する幽門の機能を温存する術式も行われ始めた。同病院では、切除範囲を胃の上部に限局した噴門側(ふんもんそく)切除術(2例)や、胃の中央部だけを切除する幽門温存切除術(4例)を取り入れている。

 これらの術式では、幽門周辺のリンパ節と迷走神経も残し、幽門の機能を保つ。食べ物が一気に小腸へ流れ込むことによって起こるダンピング症候群を軽くできるのが大きなメリットだ。

 ただし、「リンパ節郭清の程度が下がるので再発の危険が出てくる場合がある。胃が半分以上残せる早期がんで、組織型もおとなしいものを対象にしている」と河本部長。周囲に浸潤しやすい「未分化型」などは悪性度が高く、早期でも機能温存術はできない。

 「温存術ができる症例はもう少し多いと思うが、メリット、デメリットをよく理解して選んでもらわなければならない。無理には勧めていません」と慎重に取り組んでいる。

 抗がん剤は手術を補助する役割で用いられる。病期2・3で合併症や全身状態に問題のない場合、術後に経口抗がん剤TS―1を服用する。スキルス胃がんや大きなリンパ節転移を伴う場合は、あらかじめがんを縮小させておく狙いで、手術前に化学療法を行う。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年09月19日 更新)

タグ: がん倉敷中央病院

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