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胃がん(倉敷中央病院) 患者体験 食事は少量ずつよくかむ

胃がん手術を乗り越え布絵本作りのボランティアに取り組む光畑香苗さん

 きょうは手作り布絵本のボランティア。光畑香苗さん(74)=岡山県早島町早島=は自分で車を運転して町立図書館へ向かう。主婦仲間と一緒にミシンを操り、背景や登場人物、建物のフェルトを縫い合わせていく。

 倉敷中央病院で胃がん切除手術を受けて6年。毎週謡曲の稽古に通い、要約筆記ボランティアにも出かける。体重42キロの細身だが、立ち居振る舞いも軽やか。病気の影はみじんも感じさせない。

 教諭を務めた小学校から勧められて検診を受け、がんが見つかった。若いころから胃痛、胃炎の持病を抱えており、がんを告げられても「ついに来たか」と思うくらいで動揺はなかったと言う。

 幸い早期。根治を目指して開腹手術を選択した。胃の3分の2を切り取る術式や全身麻酔の危険性の説明を受けて怖おじ気を震いはしたが、術後はあまり痛みも感じず順調に回復。20日で退院できた。

 帰宅後に一番心配だったのは食事。不快なダンピング症候群に見舞われることはなかったが、それでも下痢には悩まされた。好物だったこんにゃくやキノコ類は細かく刻んでもダメ。脂っこいものも受け付けない。友人と食事に出かけても、天ぷらの衣ははがさなければならない。

 基本は胃を助けるために少量ずつよくかむこと。朝はパンと果物と紅茶、昼はめん類、夕食は野菜たっぷりのみそ汁とご飯を中心にする。洋菓子は避けているが、草もちやいちご大福は手作りし、孫たちと一緒に食べられるようになった。

 転移や再発もなく5年を過ごし、定期的な外来受診の必要がなくなった光畑さんは、新たなボランティアを引き受けた。同病院胃がん切除患者会「いーふれんず」の世話役だ。会名は「胃」と「いい友達」をかけた光畑さんのアイデア。年3回、毎回30〜50人の患者が集まり、6グループ程度に分かれて懇談している。

 患者による闘病体験の発表、医師や看護師、薬剤師による療養法のミニ解説がある。光畑さんも先輩患者として相談に乗り、胃にやさしい食べ方などをアドバイスする立場だ。

 入院中、麻酔科医に「ボランティアをやりたいので早く元気になりたい」と言うと、温かく励まされ、力づけられた。医学に対する感謝の思いを込め、会を支えている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年09月19日 更新)

タグ: がん倉敷中央病院

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