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前立腺がん(岡山大学病院) 内照射療法  低リスク群にLDR

岡山大学病院の那須保友教授

 内照射療法のLDRは岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)の、HDRは川崎医大(倉敷市松島)の“お家芸”とも言える分野で、研究実績、症例数、さらにはスタッフの質ともども国内の最高水準を誇る。

 どんな治療なのか。

 現場を統括する岡山大学病院・新医療研究開発センターの那須保友教授=泌尿器科学=と川崎医大の永井敦教授=同=にあらましを聞いた。

1年がかりで死滅 

 LDRは1990年ごろから米国で普及、国内では2003年に認可され、主に早期がんの低リスク群の患者を対象に急速に普及した。

 岡山大は翌04年1月からスタート、累計の症例数は481例(今年9月現在)を数えて全国6位。関西や九州、四国方面からの患者も多く、60〜70代を中心に毎年50人前後が治療を受けている。

 最新のコンピューター技術を駆使した手術はわずか1〜2時間。下半身に麻酔をかけ、あおむけになった患者の会陰(えいん)部(性器と肛門の間)から特殊な針を刺入し、その針を通して低線量率線源(ヨード125)を密閉した微細なカプセル(直径0・8ミリ、長さ4・5ミリ)を50〜100個程度埋め込めば終わる。

 カプセルからは常時、微弱な放射線が放たれ、約1年がかりで周囲のがん細胞をじわりじわり死滅させていく。カプセルは前立腺内に永久に残るが、強度は60日ほどで半減し、1年もたつと消滅する。

 治療は保険が適用され、患者の負担は約30万円。前立腺を摘出する開腹手術に比べて体への負担が軽く、入院期間も約2週間かかっていたのが4泊5日(木曜・入院、翌金曜・治療、翌週月曜・退院)で済む。外照射療法と比較しても周辺の正常な臓器への影響が少なく、退院後に長期的な通院治療の必要もない。

 「岡山に居ながらトップレベルの治療を受けていただくというのが私たちの思い。そのための努力を日々積み重ねている」と那須教授。最先端の医療を担う自負と責任の重さをかみしめながら放射線治療のみならず、遺伝子治療の研究やロボット技術の導入などの新たな課題に意欲的に取り組んでいる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月03日 更新)

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