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前立腺がん(川崎医大病院) 内照射療法 中・高リスク群はHDR

LDRのイメージ

入院は2泊3日 

 「がん細胞を殺すのに必要な線量を100とすると、LDRが1年かけてゆっくりと100を照射するのに対し、HDRでは短時間で済ませる」と永井教授。両者の違いは合計線量の多い少ないではなく、放射線を当てる時間というわけだ。

 川崎医大で1997年から取り組んでいるHDRの症例数は年間コンスタントに100近くになり、今年8月末までの累計は892例と全国でも断トツ。泌尿器科として国内で初めて同療法を導入して以降、トップ集団を走り続けている。

 治療原理や針の刺入手法など手術の流れはLDRと大差ないが、こちらはがんが進行した中・高リスク群の患者に適応される。高線量率線源(イリジウム192)を使用、その威力はLDRの4500倍にもなる。

 イリジウム線源を通すために一時的に刺入する針は平均13本。前立腺に刺して1回約15分で1日に2回、午前と午後に分けて集中的に放射線を照射し、夕方には針を取り出す。

 入院は2泊3日。治療中は針が刺さったままで自由に身動きできないが、痛みは少ない。LDRと同じく治療には保険が適用され、3割負担で約15万円。

 原則的に外照射療法を併用、13回程度通院するため全治療は3週間ほどになる。また、前立腺肥大を合併している場合はホルモン療法で体積を小さくしてから実施する。

 「欧米では切除手術よりも放射線治療が主流。再発率も低く、何より施術後のQOL(生活の質)が高い」と永井教授は話す。

「岡山モデル」 

 患者にとってさらに心強いのは、放射線治療に実績のある両病院が2006年から高度医療を迅速に提供すべく「岡山モデル」を構築したことだろう。

 競合から協調へを合言葉にLDRは岡山大学病院で、HDRは川崎医大で―とのすみ分けを行い、連携を深めている。

 その原動力となっているのが那須教授と永井教授。2人はともに愛媛県の出身で愛光中・高校(松山市)の同級生。岡山大への入学は相前後したものの、ともに泌尿器科学を専攻した。

 以後も互いに刺激し合いながら研究に、次代を担う若手の育成にと高みを目指して余念がないようだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月03日 更新)

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