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眼科の検査はなぜ多い?重要性教えて 岡山大学病院眼科・松尾俊彦医師に聞く

 眼科に行くと、視力検査をはじめ、検査機器を使っていろいろな検査が行われます。面倒だと思われる人がいるかもしれませんが、目の状態を正しく判断できるだけでなく、隠れた体の病気の早期発見につながります。検査の目的と重要性について聞きました。


検査でわかること


 ちえちゃん この前、おばあちゃんが目がかすむからって、眼科に行ったの。目薬でスッとしたいだけだったのに、たくさん検査をされたって。どうしてあんなに検査がいるのかしらってブツブツ言ってたよ。

 としひこくん ぼくのおばあちゃんもそうだった。眼科にいって「目がショボショボします」って言ったら、機械の前に座らされて、中の絵をのぞいて見る検査をしたんだって。それから別の機械の前に座って顎を置くと、今度は ポンッ!って目に風があたってビックリしたんだって。あとは学校検診みたいな視力測定。まず片目を隠して、視力表の上から下に向かって見えるところまでを言うんだよ。学校と違うのはね、そのあとメガネをかけてレンズをはめて見るんだ。そしたら、下の方まで見えたんだって。

 しばらく待ってると診察室に呼ばれて、やっと眼科の先生に会えたんだって。先生に目の具合を聞かれて、また機械の前に座るんだ。今度は部屋が暗くなって、顎を機械の上に置くと、ピカッって光を目にあてたんだ。それから先生は、大きなレンズをかざして、おばあちゃんの目をのぞくの。ちょっとまぶしかったって、おばあちゃんが言ってたよ。

 ちえちゃん なんだか、大変そう…。なんでこんなに検査がいるのかなぁ。岡山大学病院の眼科の松尾俊彦先生に聞いてみよう。

 松尾先生 眼科に来られた患者さんには、屈折検査、眼圧検査、矯正視力検査、細隙(さいげき)灯とう顕微鏡検査、眼底検査など、まず基本となる検査をします。これらの検査で大まかな目の状態がわかります。

 屈折検査は赤外線を使って、目の屈折の状態、つまり、屈折異常(近視・遠視・乱視)の程度を測定します。眼圧検査はいろいろな方法がありますが、空気を目の表面の角膜に当てたときの角膜がひずむ具合を光で測定して眼球の内圧(眼圧)を測る機器をよく使います。視力検査は、5メートル離れた先にある視力表を見てもらって行います。まず裸眼らがん視力(メガネをかけないときの視力)、次に屈折異常を矯正するレンズが入ったメガネをかけて、矯正視力を測ります。診察室では、顕微鏡を使って眼球の表面や眼球の中を観察する細隙灯顕微鏡検査、眼底鏡を使って網膜を観察する眼底検査を行います。


病気を早期発見


 裸眼視力が悪くても、矯正視力がよい場合は、まず安心です。もし、眼球の表面や眼球の中の光の通り道になにか異常があると、メガネをかけて矯正しても視力が出ません。たとえば白内障の場合は、眼球の中の透明なレンズ(水晶体)が濁るので、メガネをかけてもよく見えません。また、眼底の網膜の中心に出血がある場合も矯正視力が出ません。あるいは視力がよくても、両目でみたら二重に見える、ものがゆがんで見えるなど、見え方に異常があることもあります。

 としひこくんのおばあちゃんが絵が見える機械をのぞいたというのが、屈折検査です。この屈折異常の値を参考にして、視力を矯正するレンズの度数を決めます。目の表面に空気があたったというのは、眼圧検査。70歳を超えた人の7%(13人に1人)が緑内障という病気をもっています。この病気を放っておくと、視神経が傷んで、物が見える範囲(視野)が狭くなってしまいます。緑内障では、眼圧が上がる場合と上がらない場合がありますが、眼圧を測ることによって緑内障の手がかりが得られます。としひこくんのおばあちゃんは、両目とも矯正視力がよかったので、まずは安心です。


 ちえちゃん どうして診察室での検査は、部屋を暗くするの?

 松尾先生 暗い方が、目の中がよく見えるからです。目の表面は、黒目が透明な角膜、白目が結膜という粘膜です。肉眼で見ても正常かどうかわからないので、顕微鏡で拡大して診察します。顕微鏡で目の中をのぞくと、角膜の奥の前房(ぜんぼう)や虹彩(こうさい)、虹彩の真ん中の瞳孔の奥にあるレンズ(水晶体)や、さらにその奥にある硝子体しょうしたいが見えます。小さな観察レンズを使うと、顕微鏡で眼底の網膜も見えます。眼底を観察する道具が眼底鏡です。棒のような形で光が出る単眼鏡、頭にかぶって使う双眼鏡があります。眼底をみると、緑内障があるかどうかもわかります。網膜の中心の黄斑(おうはん)の病気(加齢黄斑変性など)もわかります。眼底を詳しく見る場合には、瞳孔を大きくする(散瞳する)点眼薬を入れて診察します。広がった瞳孔は3時間ぐらいで元の大きさに戻りますが、散瞳している間は、ぼやけて見える状態が続くので気をつけてください。

 としひこくん ぼくのおばあちゃんの目は大丈夫かな?

 松尾先生 としひこくんのおばあちゃんは、このような検査では異常なく、目の表面の涙が減って、角膜が乾きやすくなったドライアイだということがわかりました。お年寄りに多い緑内障、黄斑変性などの病気はありません。ただ、細隙灯顕微鏡検査で右目の水晶体に少し濁りが見られました。でも矯正視力がいいから心配ないですよ。まだ白内障の手術をする必要はありません。目が乾かないようにする目薬で十分です。


安心できる医療を


 ちえちゃん 岡山大学病院の眼科には他にもたくさん機械があって、大勢の人が働いているけど、どんな仕事をしているのかなぁ?

 としひこくん 眼科だけじゃなく、内科とか外科とか、いろんな診療科があるんだ。だから、まず外来の総合受付に行って「どの科へ行きたい」って手続きしてから、眼科の受付にいくんだ。どの科に行ったらいいのかわからないときは、総合診療内科っていう科にかかるんだよ。

 眼科の受付には、クラークと呼ばれている事務職員がいて案内してくれるし、矯正視力などの検査は、検査室で視能訓練士っていう人がしてくれるよ。看護師もいて、入院の説明や採血、糖尿病の人の食事の心配をしてくれたりするんだ。血圧も測ったりして体調が悪い患者さんの世話をしているよ。

 松尾先生 どの科もそうですが、病院では医者だけでなく、看護師、視能訓練士、事務職員が協力して働いているのです。薬のことがわからない場合は薬剤師、X線(レントゲン)検査は診療放射線技師、血液検査や心電図などの検査は臨床検査技師がしてくれます。目の病気でも身体の病気からきている場合もあるんです。白内障で目の手術をするときも、全身の健康状態を把握しておく必要があります。患者さんの心配を少しでも減らせるように、みんなで力を合わせて、安全で安心できる医療を行っています。

 ※岡山大学病院を初めて受診する方は、紹介状と予約が原則的に必要です。

(監修 岡山大学病院眼科・松尾俊彦医師)


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献眼のお願い

角膜移植のために


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 透明な角膜が濁ってしまったために視力を失った患者さんが、再び視力を取り戻すために、角膜移植が行われます。角膜移植も他の臓器移植医療と同様に、献眼、すなわち死亡時に眼球(角膜)を提供してくださる方があって初めて成り立ちます。

 献眼は、死亡されたときにご遺族が承諾されれば可能です。もちろん生前から岡山県アイバンクに献眼登録を行っておくこともできます。事前の登録がない場合でも、ご遺族の判断で、死後、献眼をすることができます。

 献眼はご家族、病院から岡山県アイバンクに連絡をいただくところから始まります。夜間、土日曜日、祝日の場合、アイバンクに電話すると、岡山大学病院の眼科病棟に自動転送され、看護師や日当直の眼科医が対応しますので、24時間いつでもご連絡いただけます。角膜提供のための強角膜片(角膜全体に一部強膜を付けたもの)摘出は、死亡された病院、あるいは自宅でもできます。岡山大学病院から眼科医が赴き、強角膜片をいただいて帰る場合が多いです。

 以前は眼球全体を摘出していましたが、ここ数年は、ご遺体から強角膜片のみを摘出し、眼球は残すようにしています。


【連絡先】

(財)岡山県アイバンク

〒700−0923
岡山市北区大元駅前3−57
電話 086−223−6622




(企画・制作/山陽新聞社広告本部)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月10日 更新)

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