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前立腺がん(倉敷中央病院) IMRT 病巣に集中照射、副作用抑制

IMRTの様子=倉敷中央病院提供

百々義廣放射線科部長

 放射線治療のうち、専用器具を使って前立腺に線源そのものを挿入し、がん細胞を死滅させる「小線源療法」に対して、体の外からダメージを与えるのが「外照射」。中でも2008年に保険適用となった「IMRT(強度変調放射線治療)」は、ビームの強弱をコンピューターでコントロールすることで、病巣のみに強い放射線を集中的に照射する高精度な治療法だ。

 保険適用前からいち早く取り組む倉敷中央病院の百々(どど)義廣・放射線科部長は「ビームの強さが均一な通常の外照射に比べ、凹形のような複雑な形状でもそれに合わせた照射が可能」と解説。「膀胱や直腸といった周辺の正常組織への影響を極力小さくでき、直腸出血などの副作用の発生頻度も5%以下に抑えられる」という。

 大まかな流れとしては、まずCT(コンピューター断層撮影)画像を基に、直腸などを避けながらクルミ大ほどの前立腺にどのように放射線を当てるか、ミリ単位で治療計画を立てる。その後、計画通りにいくか模型を使って照射し、確認する―。CT撮影から実際の治療に移るまで、約2週間かけてこの検証作業を行う。

 1回の照射時間は3分ほどで、ずれないように体を台に固定するなど準備を含めても15分程度。手術と違って体を切らず、小線源療法のように麻酔をかけることもない。これを1日1回、毎週5回(原則月〜金曜日)、計40回近く行う。入院は必要なく、通院治療で対応できる。

 治療は比較的長期でも1回当たりの時間が短いため、「仕事を持つ患者さんの中には、会社に通いながら治療を受ける人もいる」と百々部長。治療中、日常生活での大きな制限はないものの、「激しい運動や暴飲暴食に加え、患部を刺激するので自転車に乗ることを禁止している」。

 対象は主に前立腺内にとどまる限局がんだが、前立腺の周囲に広がっていても、遠隔転移がなければ治療は可能。同病院では基本的にIMRT開始前には内分泌療法(ホルモン療法)を併用し、がんを増殖させる男性ホルモンの作用を内服薬や注射で抑えて治療効果を高めている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月17日 更新)

タグ: 倉敷中央病院

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