文字 

(5)「痛くない」「見られない」「がん発見率が高い」乳がん検診 笠岡第一病院放射線科部長 笹井信也

笹井信也氏

 MRI乳がん検診を受けた理由を聞くと、不安が大きいことに気付かされます。マンモグラフィ検査は「痛い」「恥ずかしい」、しこりなどの気になる症状があるけど「そのままにしていた」。乳がん検診受診率が低い日本の現状がうなずけます(日本47%、欧米70%以上)。どのような方にも安心して乳がん検診を受けてほしい、MRI乳がん検診にはこの思いが込められています。

 MRI検診では拡散強調という悪性病変を効率的に抽出できる撮像法を使います。この方法は通常のMRI検査でも活用されていますが、悪性病変を正確に描出するにはより高い水準が必要です。例えるならF1レースのようなもので、装置はもちろん、診断までの全ての過程で高いレベルが要求されます。私たちは「.MR」(ドットエムアール)という名のもとに高水準のMRI乳がん検診を行なっています。「.MR」は全ての人に安心を届けることにこだわっています。

 MRI乳がん検診は日本で開発され、高い精度管理のもとに運用、精通した画像診断専門医が診断を行います。その結果、MRI乳がん検診のがん発見率は1千人あたり14・7人。対象が異なり直接比較はできませんが、マンモグラフィ検査の5倍程度の発見率です。陽性反応適中度(精検が必要とされた人のうち、がんが発見された人の割合)は約20%と驚異的に高いです。マンモグラフィ検査の許容値は2・5%以上とされています。このMRI検診のがん発見率の高さ、精度の高さがわかります。

 検診の流れをご紹介します。MRI検査はうつ伏せの姿勢で乳房が圧迫されない状態で撮像します。Tシャツを着たまま検査ができます。ですから、痛くないし直接見られることはありません。検査にかかる時間は15分ほどです。「.MR」室には地域を象徴するカブトガニのイラストがあり、窓からカブトガニの生息する海を見ることができます。

 私たちは快適で満足のいく検診を目指しています。予約は電話や窓口の他にwebで予約ができ、多くの方が簡便なweb予約を利用されています。気になる症状については、検査結果報告書に返答をします。

 「右乳房にしこりを感じるときがあるとのことですが、該当する所見はありません。このため、この点については安心して良いと思われます」

 乳がんは30代から増加します。日本では乳がん検診を受けている人は半数です。このために乳がん死亡率は減少に転じていません。欧米では乳がん検診受診率は70%以上で乳がん死亡率は既に減少しています。マンモグラフィ検査を受けていない約300万人の皆様に知っていただきたい、「痛くない」「見られない」「がん発見率が高い」乳がん検診があります。

     ◇

 笠岡第一病院(0865―67―0211)

 ささい・のぶや 岡山朝日高校、高知医科大学卒業。岡山大学放射線科、伊ローマ大学放射線科、岡山画像診断センターなどを経て2018年より現職。放射線診断専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年03月07日 更新)

タグ: がん笠岡第一病院

ページトップへ

ページトップへ