文字 

子宮がん(川崎医大病院) 放射線治療 外照射と腔内照射を併用

川崎医大病院放射線科(治療)の操作室。コンピューター制御で腔内照射などを行う

子宮がん放射線療法

平塚純一教授

 子宮がん治療の基本は手術だが、切らずに治す放射線治療も選択肢の一つだ。手術では体への負担が軽い腹腔(ふくくう)鏡手術も行われている。それぞれの治療法などを川崎医大病院(倉敷市松島)、倉敷成人病センター(同市白楽町)で聞いた。

///////////////////////////////////////////

 川崎医大病院放射線科(治療)を訪ねると、腔内(くうない)照射=左図参照=の初回治療が行われていた。子宮がんの病巣に集中的に放射線を当てる療法だ。患者は70歳代。子宮入り口の頸部(けいぶ)にできたがんが膣ちつの方向へ広がり、病期III期と診断された。

 照射前に「アプリケータ」と呼ばれる中空の特殊な管3本が子宮と膣に挿入された。病巣を正面と側面からエックス線撮影。エックス線画像のデータはコンピューターに入力され、3次元画像に変換された。この3次元画像を元に線量分布(放射線を当てる範囲)や照射位置が決まることになる。

 腔内照射はコンピューター制御で、直径0・9ミリの密封小線源(微小な放射性物質イリジウムを封入)を前述の3本のアプリケータ内に送り込み、それを移動させながら行われた。1回の線量6・0Gy(グレイ)、照射時間は1回10分から15分程度という。

 子宮がん放射線治療のほとんどは子宮頸がんが対象となる。子宮の奥にできる子宮体がんは放射線に対する感受性が低いとされ(異論もある)、子宮体がんの放射線治療は重篤な合併症があり手術ができない場合や、術後の補助療法として行われることが多い。川崎医大病院での子宮がん放射線治療実績は、2000年からの10年間で189例。

 根治を目的とする子宮頸がんの放射線治療は、体外から皮膚を通して放射線を当てる外照射と腔内照射の併用が標準治療だ。「言い換えれば、外照射のみで腔内照射ができない施設では、子宮頸がんの根治的放射線治療はするべきではありません」と、平塚純一・川崎医大放射線医学(治療)教授=日本放射線腫瘍学会認定医=は言う。

 標準治療は日本で1980年代に確立された。1日1回、週5日、約6週間かけて行う。総線量は病期や腫瘍の大きさによって異なり、6種類の治療スケジュールがある。病期が進行するほど総線量に占める外照射の比率が高い。例えばIII期(腫瘍径が大)は、外照射のうち全骨盤照射(骨盤内の広い範囲に当てる)が計30〜40Gy、外照射の中央遮蔽(腔内照射も行うため骨盤内の中央部に当てない)が計20〜25Gy、腔内照射が計15〜20Gy(3〜4回に分けて実施)―となっている。

 平塚教授によると、子宮頸がん放射線治療単独での5年生存率は病期I期80〜90%、II期60〜80%で、I、II期ともに手術と同等の成績。一般に手術適応ではない病期III期は40〜60%、同IV期10〜40%という。日本では手術可能な症例は手術が優先されるが、欧米ではすべての病期で放射線治療が主体で、米国では早期がんの6〜7割に行われている。

 平塚教授は「子宮がんの放射線治療には歴史があり、標準治療を適切に行えば成果は出る。専門医と相談して治療の選択肢の一つにしてほしい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年11月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ