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(上)脚の健康度チェック 岡山済生会総合病院 理学療法士に聞く

足の健康度チェック

遠藤有二さん

三上晃生さん

 高齢者の転倒は大腿骨頸部けいぶ骨折などを引き起こす。介護が必要になったり、寝たきりにもつながりかねない。岡山済生会総合病院リハビリテーションセンター(岡山市北区伊福町)の理学療法士に、脚力維持・強化に着目した転倒予防について聞いた。2回に分けて紹介する。

 「転倒を“原因”ではなく“結果”と捉えることが大切です」と同センター技師長の理学療法士遠藤有二さんは注意を促す。高齢者の転倒は運動機能や感覚機能全体が衰え、その結果として起こる。

 加齢に伴う筋力や平衡機能の低下のほか、不整脈、末梢まっしょう性神経障害、関節リウマチ、白内障といった既往の疾患、服用中の薬剤の多さ、室内段差、照明不良―などリスク要因は多岐にわたる。脚力低下もリスク要因の一つとして挙げられる。

 脚の健康度をチェックする簡易検査には図のような例がある。このうち(5)の「3メートルいす間往復テスト」は、いすから立ち上がって3メートル前方にある目標物を回り、再びいすに座るまでの時間を測る。

 各検査の結果について、同センターの理学療法士三上晃生さんは「(1)で5秒以下、(2)で5歩以下の人の75%以上が過去1年間に転倒経験があったと言われている。(3)で10秒以下なら、日本の横断歩道の9割は青信号の間に渡れます」と説明する。(4)については前方へ伸ばせる距離が15センチ以下なら転倒リスクが約4倍、16〜24センチはリスクが約2倍となり、(5)で13・5秒以上かかると今後の転倒リスクがおおむね高くなるという。

 厚生労働省「不慮の事故死亡統計」では、2008年「転倒・転落」による死亡は7170人(男性4230人、女性2940人)で約8割が65歳以上だった。在宅高齢者の15〜20%が1年に1回以上転倒を経験しているとの報告もある。

 高齢者の転倒は、外傷や痛みに対する極度の恐怖感から身体活動を拒む「転倒後症候群」や、身体を使わないことで機能が低下してしまう「廃用症候群」のきっかけにもなる。遠藤さん、三上さんは「転倒予防で健康に過ごせる時間を可能な限り長く保ちましょう」と口をそろえる。

 次回は転倒予防の運動例を紹介する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年11月21日 更新)

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