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(下) 脚力を強くする運動 岡山済生会総合病院 理学療法士に聞く

 前回(11月21日付メディカ)に続き、岡山済生会総合病院(岡山市北区伊福町)リハビリテーションセンターの理学療法士に高齢者の転倒予防について聞いた。今回は脚力を強くする運動がテーマ。

 骨盤より下方にあり主に股関節や膝関節、足関節を動かすための筋肉には、腸腰筋、大腿(だいたい)四頭筋、前脛骨(けいこつ)筋、大殿筋、大腿二頭筋、下腿三頭筋などがある。「これらを鍛えれば転倒予防の一助になる。筋力の衰えは転倒要因として上位に挙げられています」と、同センターの理学療法士三上晃生さん。膝折れを防ぐ大腿四頭筋と下腿三頭筋、足首を動かす前脛骨筋は転倒を防ぐ特に重要な筋肉だという。

 三上さんは、立位(立った姿勢)で脚力を強くする六つの運動=図参照=を勧める。対象は65歳以上で転倒歴がなく、自立歩行ができる人。やや負荷の強い運動もあり、運動中に転倒しないよう手すりを使ったり、壁や机に手を突いて行う。

 (1)で鍛えるのは主に大腿四頭筋と大殿筋。立った姿勢からゆっくり中腰になり、そのまま5秒ほど保ち、元の姿勢に戻る。上半身が前傾しないよう背筋を伸ばすと、下半身に負荷がかかって効果的。

 (2)は太ももを上げ、腸腰筋を鍛える。太ももを上げない方の脚で体重を支えると、骨盤周囲の筋肉にも力が入る。体が後ろに傾かないように注意。左右交互にゆっくりと5秒間ずつ行う。

 (3)で鍛えるのは主に大殿筋と大腿二頭筋。これも左右交互にゆっくりと5秒間ずつ行う。体が前傾しないように上半身を真っすぐに保つと、体重を支える方の脚の臀部(でんぶ)にも力が入る。

 (4)は主に股関節の外転(外に開く)筋群を鍛える。立位の姿勢で股関節をゆっくりと外側に開き、5秒ほど保つ。上半身が横に傾かないようにすると、体重を支える側の外転筋群にも力が入る。

 (5)は主に前脛骨筋を鍛える運動。上半身が前傾しないよう注意する。(6)は下腿三頭筋を鍛える。上半身が後ろに傾いたり腹部が前に出ないように行う。(5)(6)とも5秒ほど姿勢を保つ。

 六つの運動とも1日に10回から20回程度、可能な範囲で行う。三上さんは「毎日運動するのは大変なので週に2、3日行えばよい。運動を継続することが肝心です」と言う。

 同センター技師長の理学療法士遠藤有二さんは「食事でしっかりとカルシウムやタンパク質を摂取し、睡眠を十分取ることも転倒予防には必要」と助言する。また脱水は転倒に影響するといわれ、水分補給も大切だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月05日 更新)

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