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(3)妊娠前に避けたい病気 子宮頸がん 岡山大産科・婦人科学教授 平松 祐司

 子宮頸(けい)がんは、子宮入り口の子宮頸部にできるがんです。原因のほぼ100%はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染で、前回(5日付メディカ)に説明した性感染症の一つです。HPVは150種類くらいあり、その中に十数種類の発がん性高リスク型のウイルスがおり、これに感染するとがんになる可能性があります。

 以前は50代、60代女性に多いがんでしたが、最近は20代、30代で急増しており、大きな問題になっています=グラフ参照。このため検診対象が30歳から現在では20歳以上に引き下げられています。

 子宮頸がんになるリスク因子としては、性交開始年齢が早い▽セックスパートナーが多い▽喫煙―などが挙げられます。症状は、不正出血、茶色の帯下(たいげ)(おりもの)、悪臭のする帯下などがありますが、初期のものはほとんど症状がなく検診を受けなければ見つかりません。妊娠したら全員、子宮頸がんの検診を受けるため、この時に発見されることも増えています。

 子宮頸がんも進行するほど大きな手術や治療を行うことになり、進行がんでは子宮摘出が必要となり、妊娠ができなくなります。初期のものでは、子宮頸部の病変をレーザーや超音波メスで円錐(えんすい)状に切り取る「子宮頸部円錐切除術」=図1参照=を用い、子宮を温存することができます。この手術は妊娠中でも可能です。しかし、頸管部の腺組織がなくなって妊娠しにくくなったり、子宮頸部が弱くなり流産や早産の原因にもなります。

 また、それ以上の進行例でも子宮頸部に腫瘍がとどまっているIb1期で、腫瘍の大きさが2センチくらいまでなら、赤ちゃんが宿る子宮体部を温存する「広(こう)汎(はん)性子宮頸部摘出術」=図2参照=が行えます。子宮頸部やそれを支える基靱帯(きじんたい)などを大きく切り取った後、子宮体部と膣(ちつ)をつなぎ合わせるのです。

 しかし、これは非常に高度な技術を要する大手術であるだけでなく、子宮頸部のほとんどを切除するわけですから、やはり妊娠しにくくなります。体外受精を必要とする割合も増え、妊娠しても流産や早産の頻度が高くなり、長期入院、流・早産予防治療をしても多くの場合、早産してしまいます。

 子宮頸部の上皮はHPVに感染すると、軽度異形成→高度異形成→上皮内がん→初期浸潤がん→進行がんと進んでいきます。妊孕(にんよう)能(妊娠できる機能)を温存するためにも、できるだけ早い時期に発見するよう努める必要があります。

 検診、ワクチン接種を

 子宮頸がん検診は産婦人科を受診すれば、見える部位にあるため細胞診検査、コルポスコープという拡大鏡検査、生検により容易に診断できます。そして、検診で陰性の人はワクチン接種も検討してください。国は予防効果の高い中学1年生から高校1年生までを対象に、接種費用の助成を行っています。

 ただ、ワクチンは(1)がんを予防するものであって治すものではない(2)日本人に多い2種類あるいは4種類のHPVを対象にしており、発がん性高リスク型のウイルス全てを予防することはできない―ことを知っておく必要があります。このため、やはり定期的にがん検診を受けることが非常に大切となります。

 結婚して出産する時に悔いを残さぬよう、子宮頸がんに対する正しい知識をもって、予防に努め自分の体を守りましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月19日 更新)

タグ: がん女性お産岡山大学病院

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