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中四国連携、不整脈など遠隔モニタリング 岡山大病院が一括管理、データ解析

ペースメーカーやICDから送られた情報を分析する岡山大病院の専門医

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)循環器内科は、中四国地方の関連病院など30以上の医療機関と連携し、不整脈などでペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)を利用している患者を一括して見守る「遠隔モニタリング」に取り組んでいる。現在、467人を引き受けてモニター中。心不全の兆候を察知して治療に結び付けるなど効果を上げている。岡山大病院によると、医療機関が連携して患者を管理するのは全国でも珍しいという。

 最新のペースメーカーやICDには、脈拍や活動量の変化など心臓の状態をモニターできる機能がある。患者宅に中継機を置くと、ICDなどが収集したデータが電話回線を通じて医師のパソコンに送信される。送信の間隔は患者の容体に応じて数日から数カ月に一度。心拍停止など緊急事態ではデータは即座に送られる。

 機材を導入すればモニタリング自体はどの病院でもできるが、データ解析は専門医でなければ難しく、通常業務の負担にもなる。岡山大病院は、解析を随時行う専門医3人を配置して連携先のモニター管理を一手に引き受け、異常があれば各病院に伝えるシステムを2010年4月に構築した。欧米では10年ほど前から同様のシステムが取り入れられているという。

 不整脈は高血圧や肺の病気、甲状腺に異常のある人がなりやすく、老化に伴い発症することもある。心臓は、そのポンプ機能が低下すると血液中の水分が肺にしみ出して呼吸困難や全身のむくみにつながる。この肺の水分量など多彩な情報を解析することで心不全の兆候を読み取ることが可能。岡山大病院は「症状が出る前の治療に成功したことが10例ほどある。遠隔モニタリングからさらに進んだ遠隔診断の実現にも近づいている」という。

 医師は情報を確認し、異常がある場合だけ患者を病院に呼ぶ。通常、患者は年4、5回通院する必要があったが、遠隔モニタリングを受けることで年1、2回になり負担が減る。受診回数が減れば多忙な医療機関側にもメリットがあるという。

 伊藤浩循環器内科教授は「重大な症状に至る前に心臓の異常を察知できる可能性が高まっている。今後も精度を高め、遠隔地に住む患者に『見守られている』という安心感を与えたい」と話していた。

 ペースメーカーと植え込み型除細動器(ICD) ペースメーカーは、不整脈などの患者の前胸部の皮下に埋め込み、心筋に電気刺激を与えて正常な心拍を得る。ICDは、致死性の不整脈などを検知すると電気ショックで心臓の動きを正常に戻す機械。高齢社会の到来で利用者は増加しており、現在約40万人いるという。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月28日 更新)

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