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(4)子宮筋腫 妊娠前に見つけ治療を 岡山大産科・婦人科学教授 平松祐司

 子宮筋腫(以下、筋腫)はありふれた疾患で、20〜40%の女性に発見されます。症状としては腹部腫瘤(しゅりゅう)、過多月経、月経痛、貧血、圧迫症状(頻尿、便秘、腰痛)などがあります。筋腫は子宮のどの部位にできるかによって、症状の出方が大きく異なります。子宮の外にできる漿膜(しょうまく)下筋腫は症状が少ないですが、筋層内筋腫や粘膜下筋腫では症状が出ます=図参照。特に粘膜下筋腫は、小さくても強く症状が出るのが特徴です。

 しかし、大きなしこりを触れるようになっていても、最近太ってきたとかメタボリック症候群になったと思い込み、5キロ以上(妊娠8カ月相当のおなか)の筋腫ができてから初めて受診する人もいます。また、妊娠して産婦人科を受診し初めて筋腫が発見されることもよくあります。最近は晩婚化傾向があるため、なおさらその頻度が増加しています。

 筋腫があると不妊になりやすく、体外受精を必要とする割合も多くなります。漿膜下筋腫で50%以上筋層外に出ているものではあまり問題になりませんが、粘膜下筋腫があると着床率は約3分の1に、妊娠率は約2分の1に低下し、自然流産率は21・9%から46・7%に増加します=表参照。従って、粘膜下筋腫は不妊治療前に除去することが必要です。

 また、多くの集計から筋層内筋腫についてみると、着床率、臨床的妊娠率は若干の低下にとどまっていますが、自然流産率は7・7%から15・4%に倍増しています。一般的に筋層内筋腫は4〜5センチ以上になると妊娠率が低下し、妊娠中に多くの症状を呈します。

 妊娠に筋腫が合併する頻度は0・5〜3・1%と報告されており、筋腫合併妊娠では妊娠、分娩ぶんべん、産後を通じて多くの合併症が出ます。頻度の高いものは切迫流産17・1〜25・9%、切迫早産16・3〜39・9%、前期破水7・3%、早産9・3〜20・0%などがあり、流産、常位胎盤早期剥離(妊娠中に胎盤がはがれる病気)、胎児発育不全、血栓・塞栓そくせん症、子宮内胎児死亡などの増加も指摘されています。陣痛異常は1・90倍、分娩時大量出血は1・58倍、骨盤位(逆子)3・98倍に増加し、帝王切開は6・39倍の頻度になります。このため、筋腫の治療をしてから妊娠することが望まれます。

 これから妊娠を希望する女性に対する治療法は、(1)筋腫だけを摘出する筋腫核出術(2)子宮鏡による手術(3)子宮動脈塞栓術(4)集束超音波療法(5)ホルモン療法―などが考えられます。このうち、子宮動脈の血流を止め筋腫を縮小させる(3)は、その1〜4%に無月経を来し、子宮壁が癒着して妊娠できなくなったり、多くの妊娠合併症を招くため、妊娠を希望する女性は選択すべきでないと考えています。また、体外から超音波を筋腫に集中照射し熱凝固させる(4)は、まだ実施施設も限られており、その後の影響に対するデータは十分集積されていません。

 岡山大学病院では出血、痛みなどの切迫流産症状が取れない人、急激に筋腫が大きくなるなどの適応がある患者さんに対しては妊娠中も筋腫核出術を行っており、良好な成績を挙げています=写真参照。妊娠中では非常に難しい手術のため、全国から紹介がありますが、筋腫を疑う症状があれば、妊娠前に産婦人科を受診することを勧めます。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年01月16日 更新)

タグ: お産岡山大学病院

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