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(3)がん検診受けませんか? 天和会松田病院外科医長 岩藤浩典

岩藤浩典氏

 新型コロナウイルスの発生から既に2年以上経過しました。感染の不安から医療機関の受診が以前より控え気味となっている方も多いと思います。

 最近の研究では、2020年にコロナ禍が始まって以降、複数のがんの診断数が10%程度減少し、切除患者数が10%以上減少していることが報告されています。国内がん登録の全国集計データの解析により新型コロナウイルス感染症の死亡数の約8倍のがん患者が、切除治療の機会を失ったと推定されています。この結果は、新型コロナ禍による医療機関への受診控えや健康診断の中止などに起因すると考えられています。

 各地方自治体は、健康増進法に基づく健康増進事業としてがん検診を実施しています。のように科学的根拠が認められた5種類のがんに対し、委託を受けた医療機関が行なっています。公的な補助金が出るため少額の自己負担で検診を受けることができます。

 がん検診のメリットは、なんと言っても「早期発見・早期治療」です。早期であれば治せる可能性が高く、患者さんの身体的負担・経済的負担や時間が少なくてすみます。

 さらに、がん以外の病気を発見し治療に結びつけることができます。例えば、胃がん検診で潰瘍やポリープの発見やピロリ菌感染を判定することができます。そしてがん検診で異常なしと判定されれば、ひとまず安心して過ごせます。

 逆にデメリットとしては、がん検診ではがんが100%見つかるわけではないことがあります。がんが小さすぎたり、見つけにくい場所や見つけにくい形をしていた場合見逃す可能性があります。また結果的に不必要な治療・検査を受けてしまう可能性があること、検査によって体に負担がかかってしまう可能性があることが考えられます。

 当院で行う胃がん検診の場合は、複数の内視鏡専門医がダブルチェックし検診精度の向上を図り、負担の少ない最新の機種で検査をするなどの配慮をしています。がん検診にはメリットとデメリットがあることを理解していただき、がんから命を守るために検診を受けることが重要です。

 がん検診で異常が見つかれば、医療機関を受診し精密検査を受けることになります。異常がなければ、経過観察となりまた次の機会に検診を受けていただくこととなります=

 現在、日本人の2人に1人が生涯のうちにがんになり、3人に1人ががんで亡くなっています。しかし多くの方ががん検診を受けることで、がんによる死亡を今より減らすことができます。

 検診を行う施設では、マスクの徹底・換気や消毒・三密の回避など感染防止対策に努めています。今年はがん検診を受けてみませんか?

 倉敷市では、6月から12月ががん検診の実施時期になっており、5月に対象者に通知が送られます。がん検診の実施に関しては、お住まいの市町村の広報やかかりつけの医療機関でご確認ください。

 厚生労働省は、がん早期発見のための受診勧奨動画「がん検診は不要不急ではなく必要な外出です」を公開しています。

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 天和会松田病院(086―422―3550)

 いわどう・ひろのり 倉敷天城高、岡山大医学部卒。国立岩国病院(現岩国医療センター)、神戸赤十字病院、済生会今治病院などを経て、2000年から天和会松田病院勤務。日本外科学会外科専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年05月16日 更新)

タグ: がん松田病院

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