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電子カルテ 病院間で共有 岡山県、12年秋運用開始目指す

医療現場で活用されている電子カルテ。情報の共有で連携がスムーズになる利点がある=岡山市立市民病院

 岡山県内の医療機関の間で患者の電子カルテをインターネットを通じ、共有するシステムづくりを県が進めている。入退院時の円滑な引き継ぎなど連携強化につながる一方で、カルテの規格が異なる病院間の情報共有が難しいため、県単位の運用は全国で長崎県のみ。システムを運営する協議会設立など課題が山積する中、県は「今秋の運用開始を目指す」としている。

 岡山県内では岡山大病院が2008年、岡山済生会総合病院が10年から、同意を得た患者のMRI(磁気共鳴画像装置)、CT(コンピューター断層撮影)画像や投薬歴などを開示し、複数の医療機関と共有。オンラインによる転院時のスムーズな治療記録引き継ぎや、検査の重複が避けられるという。

 長崎県では04年から大村市医師会などが中心となって「あじさいネット」を運営。病院や診療所など144施設が利用、約2万人分のカルテが開示されている。

 岡山県の構想はこうしたシステムに倣ったもので、患者は病院での受診や入院時、カルテの開示を希望する他病院や地元のかかりつけ医などを選択。病院からの情報を薬局や介護事業所などでも利用可能にする。いずれの施設も随時、患者の経過情報を追加できる。

 県は昨年1月、医師や大学教授らでつくる検討委員会を設立し、公開する患者情報の範囲などを協議。そこで打ち出した案では、今年6月にシステムを運営する地域協議会を発足させ、秋をめどに運用を始めるとした。

 ただ、スタートへの課題は山積している。電子カルテは開発メーカーごとに規格が異なるため、病院間で混在。規格を共通化するサーバーの導入費用などが病院ごとに必要で、システム構築後も維持費が生じる。

 システムを管理する地域協議会も設立のめどが立っていない。医療関係者との交渉を県が進めているが、システム管理などに資金や人材が必要なことから、交渉は難航している。

 県は今後も検討委員会で議論を重ねる一方で、500を目標に参加する医療機関などを募る。医療推進課は「クリアすべき課題は多いが、患者の『電子健康手帳』としての利用も可能。関係者の協力を得て、運用にこぎつけたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年01月29日 更新)

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