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食道がんに切開最小限の手術導入 岡山大病院 体の負担減、入院期間短縮

岡山大病院での食道がんの鏡視下手術の様子。患者の身体的負担は少ないが、医師には高度な技術が求められる

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)消化管外科は鏡視下機器(胸腔=きょうくう=鏡、腹腔=ふくくう=鏡)を用い、身体の切開を最小限に抑えた食道がん手術を手掛けている。身体的負担が少なく、昨年5月の導入以降、30人を超える患者の入院期間は従来の半分以下の3週間程度まで短縮したという。一方、医師には高い操作技術が求められ、同大病院は今月、「低侵襲治療センター」を設立して人材育成にも乗り出した。

 今年1月、同大病院外来診療棟の診察室。消化管外科の白川靖博講師が、昨年11月に鏡視下で食道がん手術を受けた男性(60)=四国地方在住=を診察し、順調な回復ぶりを確認した。

 男性は昨年9月、地元病院で食道がんと診断され、主治医の勧めで一度は従来の開胸開腹手術を受けることを決断した。しかし、病について調べるうち、食道がん手術の症例が多い同大病院を知り、他の医師に意見を聞く「セカンドオピニオン」を求めて来院。11月下旬に手術を受け、約3週間後に退院した。

 男性は「退院の日から畑仕事を再開した。手術前よりペースは落ちたが、ここまで回復できるとは。本当に感謝したい」と喜ぶ。

総合的ケア 

 岡山大病院の食道がん手術は2010年が75例、11年83例。12年は100例程度が見込まれ、増加傾向にある。鏡視下手術も導入以来、徐々に増え、現在は3分の2を占めるまでになったという。

 患者の右胸の5カ所に小さな穴を開け、胸腔鏡を入れて胸部の食道のほとんどを切除。腹腔鏡などを使って切り離した胃を管状にしてのどの近くまでつり上げ、残った食道とつないで食物の通り道を再建する。

 一連の作業をチームリーダーの白川講師ら3人が分担し、手術の平均時間は約10時間。「開胸開腹手術よりも時間はかかるが、肋骨(ろっこつ)の間を広げることなく治療でき、術後の痛みを訴える患者さんも少ない。合併症のリスクも減らせる」と白川講師は利点を挙げる。

 さらに、「周術期管理センター」による診療科の枠を超えた総合的なケア体制も敷く。看護師や理学療法士らが手術前後に患者と面談。手術方法やリハビリ、退院までの手順などを伝え、患者の不安緩和やスムーズな治療につなげ、入院期間の短縮につなげている。

治療の拠点に 

 ただ、食道がんの鏡視下手術には課題もある。鏡視下器具を使いこなせる医師は岡山大病院にも少なく、白川チームによる手術のスケジュールは当面、埋まっているという。

 高いスキルを持った人材の育成に向け今月、同大病院は「低侵襲治療センター」を立ち上げ、最新の鏡視下器具2セットと、反復練習が可能な模擬訓練機器1台を購入した。熟練の医師が後進を指導し、技術力アップを図る。

 センター長の藤原俊義副病院長(消化管外科長)は「優れた医師を多く育て、西日本の食道がん治療の拠点を目指したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年04月10日 更新)

タグ: がん岡山大学病院

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