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医療界の心配事 岡山済生会総合病院名誉院長 糸島達也

 私は昨年、岡山済生会総合病院の名誉院長になってから、病院での内科医業務の他は余裕ができて、ボランティアで仕事を引き受けています。その一つにNPO法人・岡山医師研修支援機構の理事長があります。「良い医師をみんなで育てよう」をスローガンにしています。

 22日に最大の行事「岡山マッチングプラザ2011~医学生・医師と医療施設との情報交換~」を岡山コンベンションセンター(岡山市北区)で開きました。医師不足が続く中、岡山県を中心とする中四国医療圏に多くの医師が来てくれるように、岡山大学、卒後臨床研修をしている大きな病院、各地で頑張っている地域病院とともに、みんなで努力しています。

 岡山県医師会理事として7年余、生涯教育を担当しており、さらに県の地域がん登録や福祉関係の仕事が加わりました。県医師会は県保健福祉部と協力して、県民の保健福祉を目立たないところで支えています。長寿社会に伴い今や5割の人ががんにかかり、3割の人ががんで死亡する時代です。関係機関ががん登録によって、どこの医療機関がどの病気を専門にしているか実情を知り、がん検診の受診率向上に生かし、早期発見により健康寿命を長くしてほしいと願っています。

 あと20~30年間は戦後のベビーブーマー、日本の経済成長を支えた人たちが高齢化していきます。岡山済生会総合病院で亡くなられた方は、死亡前5年間で平均5回入院されていました。これから増え続ける医療介護需要に対して、財源、人手をどうするのか。

 この10年間で診療報酬を10%近く下げられた医療界は、過疎地域では経営が成り立たなくなっていることも大きな問題です。銀行支店や学校、コンビニは数を減らし、合理化で対応しています。医療機関の合併統合もアメリカでは進展しましたが、日本では進んでいません。過疎地域の高齢者が取り残されることがないように、医療をいかに守っていくのか。私は行く末を心配しています。

(2011年5月26日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年05月26日 更新)

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