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脳梗塞で血栓吸引治療  岡山大病院 杉生、徳永講師

【写真左】徳永浩司講師、【同右】徳永浩司講師

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)脳神経外科の杉生憲志講師と徳永浩司講師は7日までに、急性期の脳梗塞で血管内の血栓(血の塊)を吸い取る医療器具を用いた治療を女性患者2人に実施した。いずれも軽い記憶障害が残ったものの、順調に回復しているという。

 血栓吸引による手術は発症から8時間以内まで対応できるのが特長。効果は高いが、3時間以内の投与が必要な血栓溶解薬tPA(組織プラスミノゲンアクチベーター)が適用できない患者を救う治療法として、全国の医療現場で導入が進んでいる。

 1例目は今年1月、突然の意識障害や四肢まひなどで岡山旭東病院(同市中区倉田)に搬送され、脳梗塞と診断された60代女性=県内在住。発症から4時間が経過していたため、tPAが使えず、同病院に杉生講師が駆け付けて治療した。

 太ももの動脈からカテーテルを挿入し、脳動脈を閉塞していた血栓を吸い取って除去した。主治医によると、軽い記憶障害が残ったが、自立した生活を送っているという。

 右半身まひと失語症で岡山大病院へ3月に搬送された70代女性=同=が2例目。発症から2時間半でtPAを使用したが、血栓を溶かすことができなかったため、3時間後に血栓吸引治療に移行。無事に終わり、術後の経過も順調という。

 杉生講師は「いずれの患者さんも血栓吸引器具で治療しなければ、半身まひなど大きな障害が残ったと考えられる。治療効果は期待通り」という。

 脳血管内治療の専門医なら、講習でトレーニングを積めば使用が可能。県内では現在、岡山大病院のほか、川崎医科大付属病院(倉敷市)、倉敷中央病院(同)でも治療を実施。岡山大病院では岡山旭東病院のほか、岡山市立市民病院、国立病院機構岡山医療センター(ともに岡山市北区)から要請があれば、応援に駆けつける。

 杉生講師は「脳梗塞治療は発症後すぐに専門病院を受診することが重要。tPAの適用外でも血栓吸引器具を使うなど別の治療法があることを知ってもらいたい」としている。

ズーム

 血栓吸引による治療法 米国企業が開発した医療器具を用い、脳動脈を詰まらせている血栓を吸引し、体外に排出する。国内では、2011年10月に承認され、販売業者によると、数十カ所以上の医療機関が導入しているという。岡山大病院などによると、tPAは発症から3時間以降の投与はできないうえ、投与しても効果がみられない患者が4割ほどいる。tPAに次ぐ治療法として近年、注目を集めている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月08日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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