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小児の心筋再生 臨床研究が成功 岡山大病院、機能は最大22%改善

7例目の患者家族に再生医療の検査結果を報告する王教授(左)=岡山大病院

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は23日、生まれつき心臓に異常がある小児の心臓幹細胞を培養し、心筋に戻して機能を強化する臨床研究が成功したことを明らかにした。昨年3月から世界に先駆けて取り組んできた、複製能力のある自らの幹細胞を移植する「再生医療」で、治療を施した7人の心筋機能は5%から最大22%改善。治療チームは7月にも国に「高度医療」の申請をし、保険適用となる“通常の医療”への一歩を踏み出す。

 先天性心疾患の場合、最終的には「心臓移植」しか治療法がなくなる患者は少なくないが、小児の脳死ドナー(臓器提供者)はほとんど現れない。「心臓の機能を強化し、身体を成長させれば心臓移植を受けられる可能性が増す」(岡山大病院)ため、今回の成功は治療の新たな選択肢になると期待されている。

 7人は左心室が小さい左心低形成症候群で、生後5カ月〜3歳で幹細胞移植を受けた。血流を改善する手術時などに採取した心臓組織約100ミリグラムから幹細胞を抽出。10日間の培養で増やし、体重1キロ当たり30万個の幹細胞(2〜3CC)を心臓の冠動脈へカテーテルで注入する。

 採取は佐野俊二・心臓血管外科教授、培養は王英正・新医療研究開発センター教授、注入は大月審一・小児循環器科教授が担当。3カ月後と1年後に心筋機能を評価した。

 7例目で、23日に3カ月後の検査結果が出た女児(3)=広島県=は心臓から送り出される血液量が3CC増えて16CCに、心筋重量も5グラム増の約17グラムに改善。母親は「顔色も良くなり、病気を忘れてしまいそう。感謝したい」と話した。1年後の検査を5月中旬に行った2例目の男児(2)=四国地方=は心臓のポンプ機能が22%アップした。

 王教授は「7人とも拒絶反応や不整脈など大きな副作用も現れず、経過は良好。国内外から問い合わせが相次いでおり、次のステップに進む」とする。

 今回の治療は安全性と効果を確かめる研究として国の承認を得て実施したため、患者は7人のみ。治療チームは岡山大倫理委員会で承認を得た後、さらに効果を検証する「高度医療」(保険不適用、最大40人)に申請。将来的には、治療費の一部が保険適用となる「先進医療」を経て完全適用を目指す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月24日 更新)

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