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乳がんと私(1) おおもと病院 名誉院長 山本泰久

 私は1956年、岡山大医学部第一外科教室に入局し大学で21年間、外科臨床医として「がんとホルモン」の研究をするうち、乳がんに強く関わることになった。そして、乳がんの予後向上のために早期発見の重要性を強く感じ、無料検診や講習会、自己検診など 啓蒙(けいもう)運動を行ってきた。

 77年、乳腺、消化器疾患専門の「おおもと病院」(岡山市北区大元)を同門の医師と共に開設した。地元医師会、地域の医療施設の協力により、30年余り、常に乳がん治療の中核病院として早期発見のための検診や、がん治療に携わってきた。

 60年ごろ、胃がん、子宮がん検診はすでに系統的に行われていたが、乳がん検診は全く未知であった。そうした中で、岡山対ガン協会をはじめ熱心な保健師、愛育委員、婦人会の方々のご協力をいただき、無料検診、予防や自己検診の講習会を町村集会所などで行ってきたことを懐かしく思い出す。

 当時、乳がん診療に関わる仲間も、乳がんグループとして乳がん検診に取り組んでくれた。65年から、乳がん検診について岡山県内外の一部自治体からの要請があり、系統的な集団検診を実施できることになった。その後、多くの自治体で集団検診が実施され、検診体制の整備や精度向上が図られてきたことは誠に感慨深いものがある。

 この五十数年、乳腺疾患一筋に関われたこと、早期発見、治療により岡山県の乳がん死亡率が減少し、全国でもトップクラスになれたことは生涯最大の喜びである。

(2011年6月2日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月31日 更新)

タグ: おおもと病院

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