文字 
  • ホーム
  • コラム
  • 原発事故に思う おおもと病院 名誉院長 山本泰久

原発事故に思う おおもと病院 名誉院長 山本泰久

 本気でやればできる。本気になってやろう。日本のために!

 3月11日の東日本大震災の発生後、ぼろぼろになっていた高速道路の一部は約1週間で修復された。水道も電気も順次回復していった。自衛隊の救助協力、消防隊の援助はすばらしい能力を発揮して、世界の注目を浴びるほどであった。

 一方、福島第1原発事故の報道で政府、東京電力、原子力専門の教授や学識経験者などの話は高度と曖昧さが入り交じって、国民の不安をむしろあおりたてたような感があった。経済産業省原子力安全・保安院のスポークスマンは適当な話をしていたが、外国人記者にはかなりいいかげんなことを言っていたようで、外国から見た日本はひどい核汚染国?という印象を与え、外国人が来なくなった。そんな中、テレビ番組でジャーナリストの池上彰さんが地震、津波、原発問題などをわかりやすく解説し、視聴者に大きな安心感を与えたと思う。

 約50年前の胃・大腸レントゲン検査では放射線防護服を着ることは少なく、夏は冷房も無く、防護服どころではなかった。当時は胃がん検診が始まったころで、毎日6時間、3週間作業を続けたところ、小さなニキビが多発し、髪がぼろぼろと抜け始めた。白血球は血液1立方ミリ当たり1200個まで激減し、食欲減退、全身 倦怠(けんたい)感があり、自己診断でレントゲン障害と思った。レントゲン係を免除され、2カ月ぐらいで完全に回復した。その後、何ということもなく元気に長生きして働いている。

 このような作業環境は現在まったくなく、完全防護で仕事をしているが、実体験からすると、原発事故の状況をあまり深刻に考え過ぎるのもどうかと思ったりする。学識経験者の話は絶対安全を求めた話として貴重なものと受け止めているが、世の中に絶対安全はないと思った方がいいのではないだろうか。

(2011年6月23日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月31日 更新)

タグ: おおもと病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ