文字 
  • ホーム
  • コラム
  • 神様は平等? おおもと病院 名誉院長 山本泰久

神様は平等? おおもと病院 名誉院長 山本泰久

 日本人は一般的に、神様も仏様にも信心深いとは思えない。正月はおさい銭を持って神様へ、受験前は神様、ご先祖様、頼れるものは何でも、結婚式は神様、教会、お葬式は仏様など多彩でとても信心深いとは思えない。そのあたりが日本的で、すばらしく良いようにも思えるのであるが~!

 患者様も患者さんも同じである。厚生労働省の役人が「患者様」というように呼びなさいと言ったとか? 誠にばかげた発想だと思う。こんな発想をした人たちは、年金、退職金なしで早々に退場してほしいものだ。

 日本人は病気になったとき、健康に不安を感じたとき、いつでも多くの良医に巡り会えることが幸運かもしれない。ほとんどの患者が平等に医療を受けている。有名人の子息や若い美形は、神が与えてくれた幸運で少し大切に扱われているかもしれないが、若くして病気になることは神の気まぐれで気の毒でもある。20年前、私の乳がん患者の平均年齢は55歳であったが、今は65歳になっている。70歳以上の方が30%、50~70歳が50%、50歳以下が20%である。

 神様は平等でないことが病気にも言える。若い乳がん患者はいろいろな条件を考慮しても、予後が悪い。もちろん他の年齢層のがんがいいわけではないが、女性の平均寿命が86歳と考えると若い人たちはかなりの努力(医療関係者と患者さん)と幸運(早期発見)が求められる。

 小児期から青年期に努力して一人前の人間になり、社会に出て活躍する過程で抜け出す人、止まる人、脱落する人の差が人生を分けるようにいわれているが、本人の資質と周囲の支持によって変わり、さらに結婚という第2段階をへて飛躍するのも神のなせるわざかもしれない。

(2011年6月30日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月31日 更新)

タグ: おおもと病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ