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国際学会 おおもと病院 名誉院長 山本泰久

 30歳、40歳のころは、外国の国際学会へ出かけるのが楽しかった。何といっても日本の勢いが良かった。「フロムジャパン」と言っただけで尊敬のまなざしを受けたように思う。五輪、万博、富士の山という感じ! 最もドルが高く最初は1ドル=360円だったが、年とともに180円、150円、120円と円が力をつけて、ドルを持たず各地で通貨を買ったものだ。

 学会ごとに暇を見つけては、競馬場視察に出かけた。オーストラリア、英国、イタリア、ドイツ、フランスなどの競馬場を訪問したが、お国柄を表してスケールの違いを感じた。フランコ政権下のマドリード競馬場でのフロムジャパンは思い出深い。スペインから最遠、地球の裏側の国から来て英語を話す紳士は、現地女子大生の憧れの的でもあった。スター的な競走馬が勝つと国民的熱狂で盛り上がるのは、闘牛以上のような気がした。

 最後に出た国際 癌(がん)学会は1982年9月、米国シアトルであった。その際、岡島邦雄先生(大阪医科大名誉教授)、西満正先生(元癌研究会病院長、故人)ご家族とアメリカンロッキーをリノまでレンタカーで走った。カナダ・バンフ、氷河、ソルトレークシティー(臓器移植で有名な病院があり米国の移植の50%が行われている)、モルモン教、野牛の群れ、温泉の噴出するイエローストン、乗馬など観光を楽しみながらネバダ州のカジノリゾート、リノでディナーショーを満喫した。

 娘と徹夜でギャンブルに挑戦、ポーカー、ブラックジャック、ルーレットなどを十分楽しんだ。シアトルのデパートで娘のスキー用ダウンジャケットを買いに行ったが、体が小さくキッズフロアへ案内されたのはショックだった。

 いつも旅行から帰ると何がうまかった?と聞かれるが、うまい物を思い出せないのは岡山の食べ物が一番うまいからだと思っている。

(2011年7月28日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月31日 更新)

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