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南海地震・東南海地震の対策 社会医療法人社団十全会心臓病センター榊原病院 榊原敬

 3.11の東日本大震災の教訓から、将来予想される南海地震・東南海地震に対する備えが求められています。耐震化、電気や水の確保、傷病者に対するトリアージ、医薬品や食料の調達など、医療機関の取り組むべき課題は多岐にわたります。もちろん新病院は新しい耐震基準に合致し、南海地震・東南海地震でも倒壊しない設計となっています。

 新病院のある北区中井町2丁目では、岡山県庁の防災マップによれば津波は及ばず、地質調査では砂礫層の上に建っているので液状化の心配もありません。ただし、防災マップでは河川の影響は計算されていないので、津波による旭川の逆流、浸水の危険性を配慮しています。対策として、建物のある部分を1M盛り土とし、1階部分を高さ5Mにかさ上げしています。非常用電源は2階、非常用水にも利用できる室内プールも2階とし、さらに厨房は3階としています。また庭には非常用の井戸を確保し、屋上にはヘリポートを設置しています。

 非常用電源は、心臓カテーテルの器械(3階)が停電するとすぐに再起動できる能力を備えています。ステント治療を途中で中止するわけにはいかないので、画像撮影をやめて透視を見て安全に処置を切り上げるためです。普段と同じ診療ができるわけではありません。(心臓カテーテルを再起動できる非常用電源を備えた病院は全国でもほとんどありません。)大きな震災となれば、短期間でのライフラインの復旧は難しく、虎の子の電気や水をいかに節約するかが重要です。新病院では停電30分を経過すると、電力制限を開始し約2週間にわたり基幹部分の電力を確保します。配線の組み替えでCTの稼動も能力的には可能ですが、多くの電力を消費するため特別な理由がない限り使うことはありません。

 トリアージとは大きな災害などで数多くの傷病者が発生した場合、治療の優先順位を設けることです(来院した順番ではありません)。全力で治療しても助かるかどうかわからない重傷者は優先から外され、治療して必ず救命できる最も重症の人から治療を開始します。よほどの事態でなければ、トリアージを行うことはありません。

 なお医薬品や食料については、大きな震災では循環器以外の診療ニーズが高いと予想されることから、貯蔵保管よりもヘリコプターによる救援物資の調達が重要と考えています。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月31日 更新)

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