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浮かぶ雲を眺めて 岡山赤十字病院 院長 忠田正樹

 初夏のゴールデンウイーク、爽やかな好季節である。私はもともとアウトドア派。若い時、休日には草野球やドライブなど、よく屋外に出かけていたが、はるか頭の上にある空に関心を寄せることはほとんどなかった。

 最近は年齢のせいか、せっかくの好天に屋外にいるのなら、走り回るよりも「空をゆっくりと見ていたい」気持ちの方が強い。天気の良い時、空に浮かぶ雲を眺めるのは心地よい。近頃はゴルフをしていても、この時とばかり思いっきり空を見上げて、面白い形の雲を探してしまう。

 雲を見るといっても双眼鏡などで観察するのではなく、ただ眺めるだけ。図鑑によると巻雲、積雲、層雲など10種類あるという。日によって空の情景は千変万化であり、一時として同じ光景はあり得ない。しかも見ているそばから、どんどん変わってゆく。見上げていると首が痛くなるので、長く続かないが、見飽きることがない。最も美しいのは「すじぐも」と呼ばれる巻雲だ。

 空を見上げながら「どのくらいの高さだろうか。流れる速度はどれくらいか。あの辺りまで空気と水分があるのか」などと、遠くの雲に思いをはせる。雲に生命があるとは思わないが、それぞれに誕生と消滅がある。人は死んだら雲になるのだろうか。いや人の魂は雲の形態を経て、人間に生まれ変わるのだという思想もある。雲は空を彩り、あらゆる生命に必要な水をもたらし、毎日の天候を演出している。

 連休中の晴れた日に、悠然と浮かぶ雲をゆっくりと眺めながら過ごすのも悪くない。空を見上げると視野が広がる。雲を眺めていると自然界の動きを感じられる。雲は生きている。

(2012年5月1日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月01日 更新)

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