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マザー・ホスピタル 岡山赤十字病院長 忠田正樹

 「マザー・ホスピタル」という言葉は、どこかの母子関連病院で使われているかもしれないが、私の造語である。私の言う「マザー・ホスピタル」とは、マザー・シップ(母艦)、マザー・ランド(母国)などをまねて、地域で中心的役割を持つ「母なる病院」を意味する。2年前の院長就任以来、少々おこがましいが、岡山赤十字病院のキャッチフレーズの一つとした。

 昨年、いわゆる「もし・ドラ」ブームがあった。「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という長い題名の小説である。その中で女子高校生がマネージャーとして野球部の役割を考える場面がある。考えた末に「野球部の目的は、観客に感動を与えることだ」と気付く。その時、野球部員は何をすべきか分かったのだ。経営学者のピーター・ドラッカー氏の言う企業の目的とマーケティング理論の応用である。

 これを病院に当てはめて考えてみると「病院の役割とは、地域住民に安心感を与えること」と言えようか。こう考えれば、病院スタッフのなすべきことは自然と見えてくるはずだ。

 例えば、病気で不安や心配を抱えて来院される患者さんやご家族を優しく迎え、適切な治療を施す。あるいは、不意の事故や急病などの緊急時は、素早い救急処置や入院対応を施すことなどが挙げられよう。

 そして患者さんやご家族はもちろん、地域の病院、診療所の先生方や当院の職員にも「信頼、親しみ、優しさ、温かさ、明るさ、安心、育てる心」を感じていただくことが重要だ。常に地域の中心にあり、優しく存在感ある「マザー・ホスピタル」でありたいと願っている。

(2012年5月15日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月15日 更新)

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