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終末期 岡山赤十字病院 院長 忠田正樹

 長生きはしたいが、どんな状態になっても生きていたいという人は少ないのではないだろうか。「終末期」の定義は「病気が治療不能で回復の見込みがなく、既に死が差し迫っている状況」。その場合、過剰な延命治療は不要だとか、尊厳死を希望するなど「終末期」の在り方が近年、注目されている。看護学生に聞いたところ、9割以上の学生が過剰な延命治療は不要と答えた。

 もし延命治療を拒否する場合、方法は二つある。一つは「終末期」となった時、点滴や薬の投与、人工呼吸器装着といった全ての医療行為を中止する決断だ。当然死を早めることになろう。もう一つは「終末期」と判断された時点で、これまで行ってきた処置以外の新たな治療は行わず、差し控える決断である。

 ただし、治療の中止や差し控えは、事前に本人が希望していたとしても、医師の独断で行えるものではない。法律も含め、家族との相談など慎重な判断を要する。例えば長年の治療困難な疾患が進行し、死が目前に迫った場合、自然死や尊厳死を望むなら、治療の中断はしないとしても、新たな延命治療を行わず差し控えるという決断があっても不思議ではない。

 しかし、非常に難しく微妙な問題であり「終末期」の解釈の違いによる誤解も生じやすい。寝たきりだが、決して死が目前ではない状態などを「終末期」と取り違え、延命治療の是非が議論されるような場合だ。決して混同してはいけないケースだ。

 人生の最晩年をどのように生き、どう過ごしたいのか。なかなか思い通りにならないことも多いが、せめて終末期となった場合の「意思表示」は、各自で考えておくべきではないだろうか。

(2012年5月29日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月29日 更新)

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