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薬学部生 超売り手市場 岡山県内の病院間で争奪戦

新卒薬剤師の確保が難しく、第1類医薬品の販売ができない時間帯が生じているドラッグストア=岡山市中区清水のザグザグ高島店

 大学生の就職が厳しい中、薬学部生は“超売り手市場”となっている。4年制から6年制に移行する中、卒業生が極端に少ない空白期間ができたためだ。岡山県内でも企業や病院間で争奪戦が激化、「ドラッグストアはどこでも内定をくれる」「相場の1.5倍の年収を示された」といった状況も。数年間は空前の“就職バブル”が続きそうだ。

 薬学部の6年制移行は、高度化する薬物療法に対応できる薬剤師育成を狙いに導入。4年制最後の05年4月入学生が卒業した09年3月から、6年制最初の06年4月入学生が卒業した12年3月までの2年間、大学院進学者や留年した学生を除き、新卒薬剤師がいない時期ができた。

 この空白期間を見越し、岡山済生会総合病院(岡山市北区伊福町)は09年度までの数年間、新卒者を例年より多めに採用。今春も新人を確保したが、薬剤師の必要数(30人)には届かなかった。人事担当者は「人材確保が非常に難しい状況。都市部の総合病院はまだ恵まれているが、地方では頭を抱えている所もある」と明かす。

 ドラッグストア業界は医療機関よりもさらに厳しい状況だ。岡山、広島など4県で92店舗を展開するザグザグ(同市中区清水)は、全店舗で調剤薬局併設を進めていることもあり、薬剤師が200人近く不足。副作用のリスクなどから販売時に薬剤師の説明を義務付けている第1類医薬品が、夜間などに販売できない状況が続く。

 このため初任給を月額2〜5万円増やし、北海道を除く全国で採用活動をしたが、今春の新卒入社は2人にとどまった。「大手全国チェーンが積極的な採用を展開する中、関西や首都圏から呼び込むのはかなり難しい」と担当者。早くから全国各地の大学に積極的に足を運び、売り込みを強める構えだ。

 ヒートアップする採用活動を反映し、薬学部には膨大な求人が寄せられる。就実大(岡山市中区西川原)は今春の卒業生84人に対し、求人数が30倍近い2506人に達した。引っ張りだこの状況は続いており、製薬会社に就職が決まった6年生(25)は「説明会に参加しただけで内定をくれた企業もあった。他学部生が苦戦する中、申し訳ない気もした」と振り返る。

 就活では引く手あまたの薬学部だが、6年制移行を機に入学希望者は減少傾向。他学部に比べて割高な学費がさらに2年間必要になったためとみられ、同大担当者は「現在の状況が志願者増の起爆剤になってくれれば」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年06月10日 更新)

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