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今と昔の健康  ~ 肥満について ~ 川崎医大川崎病院 健康管理センター センター長 佐藤友美

 かつて、「健康優良児」という言葉がありました。その言葉は1930年(昭和5)、朝日新聞社が文部省などの後援を得て始めた「健康優良児表彰制度」に端を発し、1996年に幕を下ろすまで、「日本一の健康」を表彰し続けられました。「健康」とはこういうものだと、具体的なサンプルを見せるから影響も大きく、80年以上たった今でも、体が大きくて、力が強い、足の速い子が健康である、という思いこみを持っている大人も少なくないでしょう。この当時の平均寿命は男性約47歳、女性は約50歳。

 一方、平和な時代と医療の発達は、現在の平均寿命を男女80歳前後で推移させ、この時代が生んだ病気には『がん』や『メタボリックシンドローム』などの生活習慣病があり、その原因の一つに肥満が大きく関わっています。本日はその肥満についてお話をしたいと思います。

肥満とは?

 肥満の指標としてBMI(Body Mass Index:体格指数)が世界的に使われ、BMIの計算式は体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)で表され、数値が大きいほど太り気味で、日本ではBMI 25以上を「肥満」としており、普通体重の基準は18.5~25となっています。

日本の肥満の現状は?

 世界保健機関(WHO)によると日本の成人のうち肥満者の割合は22.4%で(男性は28.9%、女性は15.9%)5人に1人以上が肥満です。ただ昨年12月の文部科学省の発表では都市部を中心に痩せすぎの子供が増える傾向が確認され、半面、地方部で肥満の傾向が高いことも判明、こうした自治体では相次いで対策に乗り出しています。

世界の肥満人口は?

 成人の肥満者は2002年の14億5,000万人から2010年には25%増加して、19億3,400万人に跳ね上がり、世界の飢餓人口の約10億人を抜いてしまいました。つまり、全人類の3、4人に1人は肥満ということです。特にアメリカでは肥満人口の増加が健康上の問題となり、ジャンクフードの販売は子供の健康や食の嗜好(しこう)を守るために、自主規制する方向に向かっています。しかしながら栄養学の知識が欠如している低所得者層には、安価で手軽なジャンクフードやインスタント食品が、口当たりの良さと、満腹感を簡単に得られることから好まれ、肥満人口は増え続けています。

 私たちが克服すべき病気は、時代とともに大きく変貌を遂げ、いまや世界の3、4人に1人は肥満。その数は過去20年で急激に増加しています。肥満はがんを含めた生活習慣病の主な原因となり、健康寿命を脅かすことになります。WHOでは『肥満はもっともありふれた問題だが、もっとも放置しやすい世界的な健康問題だ』と警告しています。食に対する関心、興味は豊かな食生活につなげるだけではなく、健康増進・維持について重要な役割を果たしていることを、未来のために、子供達に伝えて行かなければなりません。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年06月15日 更新)

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