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次世代CTの導入増える 県内大病院 診断精度向上、患者負担軽減に期待

岡山大病院にある次世代CT。ドーナツ形の本体内部で2対の線源と検出器が高速回転する。一瞬で撮影でき、受診者の負担が少ない

心臓表面を走る冠動脈が鮮明に写った次世代CTの画像。血管の狭窄(きょうさく)などが見つけやすくなる=心臓病センター榊原病院提供

 岡山県内の大規模病院で「次世代CT」と呼ばれる高機能CT(コンピューター断層撮影)の導入例が増えている。メーカーによる技術開発競争の激化を反映し、ここ数年で撮影速度や画質の向上、被ばく線量低減が実現。患者の身体的負担軽減と診断精度の向上が期待される。

 CTは内臓や骨など組織によって放射線吸収量が違う性質を応用する。受診者が載る台をドーナツ形の本体に入れ、本体内側で放射線の発生装置(線源)と、対になる検出器が回転。放射線データを解析し、輪切りの断面を画像化する。

 心臓病センター榊原病院(岡山市北区丸の内)は2008年4月、県内で初めて心臓専用に次世代CTを導入。最速0・35秒で1回転し、0・5ミリ間隔で輪切り320枚を撮影。つまり幅16センチ分で、心臓全体の画像が得られる。

 不整脈や狭心症などの画像診断は心臓が脈打つためぶれやすく、投薬や息を止めることで拍動を減らす。津野田雅敏・放射線科部長は「息止めの時間は10年前の旧型で30秒、従来型でも約10秒と、お年寄りや重症者には負担だった」と指摘。「新機種は一瞬で終わり『もう終わったの』と驚かれる方が多い」と言う。

 メーカー各社によると、従来の技術開発は1回転で撮れる輪切りの数を4、16、64枚に増やす高速化と鮮明さの向上が主眼だった。だが、4年ほど前に現れた次世代CTでは、検出器や線源の性能アップで撮影枚数を320に増加▽線源と検出器を2対に倍増させ高速化▽2通りの強さの放射線で臓器内の結石などの成分を分析―と特長が細分化した。

 11年3月から線源が2つあるタイプを運用している倉敷中央病院(倉敷市美和)は心臓の撮影に利用。岡山済生会総合病院(岡山市北区伊福町)も今年1月から導入し、肝がんの発見率向上などに期待する。画像の鮮明さから、両院とも「カテーテルを挿入する血管造影が必要だった症例でも、体を傷付けない画像診断で対応可能なケースが現れた」と評価する。

 岡山大病院(同鹿田町)では11年6月から今夏にかけ、3社の3機種を導入。佐藤修平准教授(放射線医学)は「心拍が早い上、息止めが難しい幼児に有効」と話す。高速撮影で被ばく線量が従来の5―10分の1に減り、腎臓結石などの成分も割り出せるという。

 ただ、導入に慎重な大病院も多い。実勢価格が1台数億円と、数千万円の従来型に比べて割高な上、「どの症例にどんな撮影方法が有効か不明」(ある病院)など、購入の判断材料となる臨床データが不十分との見方があるためだ。

 岡山済生会総合病院の戸上泉・画像診断センター長は「肝がんの早期診断で発見率向上が期待できる。有効性が確認されれば大腸、胃がんにも使いたい。試行錯誤を重ね、機器の性能を十分に引き出したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年06月17日 更新)

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